「通勤という概念なくす」 富士通がオフィス半減、テレワーク全面導入へ その働き方の全容とは?
富士通が2022年度末までにオフィスの規模を半減する。今後は約8万人の国内グループ社員を対象に、在宅勤務を標準とした働き方に移行する。新しい働き方を効率よく運用するために、富士通はどんな取り組みを行うのか。
富士通は7月6日、2022年度末までにオフィスの規模を半減すると発表した。今後は約8万人の国内グループ社員を対象に、在宅勤務を標準とした働き方に移行する。20年7月をめどにコアタイムのないフレックス勤務制度を導入する他、通勤定期券を廃止し、代わりに月額5000円の手当を支給する。「通勤という概念をなくす」「社員が生活と仕事の時間配分を自ら考えられるようにする」と、富士通の平松浩樹執行役員常務(総務・人事本部長)は話す。
富士通は新型コロナウイルス感染拡大を踏まえてテレワークを推進し、現在はオフィスへの出勤率を従来の約25%に抑えている。だが、「生活様式や価値観が大きく変わったため、勤務制度、手当、福利厚生、IT環境を全面的に見直し、仕事内容や目的、ライフスタイルに応じた最適な働き方を取り入れる必要がある」(平松常務)と判断して働き方の刷新を決めた。
廃止せず残すオフィスは3種類
廃止せず残すオフィスは2種類に分ける他、外部のシェアオフィスの契約数を拡大し、それぞれに異なる環境を用意。業務上の都合で出勤が必要な場合や、勤務環境を変えてリフレッシュしたい場合などに、社員が目的に応じて使い分けられるようにする。
既存のオフィスは、主要拠点であり社内外の交流の場として使える「Hub Office」、高性能なビデオ会議システムを備え、ミーティングの拠点として使える「Satellite Office」の2種類に再整備する。
外部のシェアオフィスは、都心や郊外の駅に近接する物件を中心に契約。社員が出張や往訪を余儀なくされた場合に、すきま時間に働けるようにする。社内では「Home & Shared Office」と呼称する。
出勤した社員の勤務状況は、子会社・富士通アドバンストエンジニアリングのトラッキングシステム「EXBOARD OFFICE」で管理する。PCやスマホのWi-Fi接続状況をもとに、誰がどこにいるかを特定できるもので、新型コロナウイルスの感染者が出た場合に備え、社員の行動履歴を把握する。
フロアに人が密集しないよう、取得したデータはレイアウトの変更に生かす。打ち合わせの際などに、アサインした人を探す手間を省く効果も見込む。
「社員の意見を調査したところ、従来のオフィスに戻りたい人は少数派だった。出勤時の用途に合わせてオフィスを最適化するのが社員の望みであり、これに応えた」(平松常務)
単身赴任は順次解除、業務の負担はAIで分析
勤務制度の面では、オフィス縮小とテレワークの全面導入に向け、単身赴任を順次解除する。現在は単身赴任中の社員の仕事内容を精査しており、テレワークや出張で対応できると判断した場合は自宅に戻って働けるようにする。配偶者の転勤などで引っ越しせざるを得ない社員が出た場合も、リモートで変わらず働けるようにする。
客先に常駐している社員もテレワークに移行できるよう、顧客との交渉も進める方針。請負業者や派遣社員は現在、特定の条件を満たした場合のみテレワークが可能だが、この条件も緩和するとしている。
この他、全社員に社用スマートフォンを支給するか、BYOD(私用端末の業務利用)を認め、業務連絡を効率化する。スマホは業務システムと連携させ、資料や研修の教材を社員がいつでも閲覧できるようにする。
テレワークの効率を高めるため、AIを使って社内メールや文書のタイトル、スケジュールなどのデータを分析し、個々人の働き方の課題を抽出するシステム「FUJITSU Workplace Innovation Zinrai for 365 Dashboard」も使用。社員の負荷を可視化し、仕事内容の効率的な割り振りにつなげる。
上司・部下間の1対1のミーティングやストレスチェックも定期的に行う。管理職向けに導入しているジョブ型人事制度(仕事内容を基軸に据え、等級や報酬を決める人事制度)を、一般社員向けに拡大する計画もあるという。
平松常務は「在宅勤務をずっと続けることで、ストレスや不安が生じることもある。これを解消するにはコミュニケーションが重要だ。現場社員だけでなく、マネジャーも目の前に部下がいないと不安になりがちだが、安心して働けるようにする」とした。
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