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セガが構想する“フォグゲーミング”とは何か? 「セガがXbox発売?」噂の発端となってしまった西川善司が種明かしをしようクラウドゲーミング? いいえ、フォグゲーミングです(2/4 ページ)

セガの“フォグゲーミング”をスクープした西川善司さんによる詳細な解説。その前編。

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全世界を騒がせた「セガ」×「FOG GAMING」騒動はなぜ起こったか

 国内外メディアが「筆者の予告」を大々的に報じ始めたのだ。たしか、当時、筆者の「シャドウ・オブ・ザ・トゥームレイダー」のゲーム実況をリアルタイムで見ていたのはわずか50人前後。恐らくこの中の誰かがSNS等に書き込んだことで波紋を広げたのであろう。

 まぁ、こういうSNSへの書き込みは「伝言ゲーム」になっていくので、話が大きくなる。ゲーム実況最中での予告発言は「次週のファミ通に乗るスクープはボクだけの独占ネタである。独占という意味では、WIRED独占のPS5予告記事に匹敵するだろう」というものだったのだが、伝言ゲームが進んでいく過程で「次週のファミ通に乗るスクープは〜(中略)〜WIRED独占のPS5予告記事に匹敵するだろう」となっていった。この「中略されての伝言ゲーム」事象は、筆者は狙って起こしたわけではないが、結果的には国内外のメディアが興味を抱いてくれたことに繋がって良かったと思う。

 ただ、この「伝言ゲーム」が「変な妄想」へと変貌されていくことには驚かされた。

 そう、「西川善司の次週のファミ通スクープは、セガがXbox Series Xをセガブランドで発売するという方針発表に違いない」という、オリジナルの文言が完全に抜け落ちた「完全なデマ」へと変換されたのだ。これは、かなりセンセーショナルで、「ゲーム実況中のたかだか50人の視聴者に向けて行った次週ファミ通のコラムの内容予告」発言が、いつのまにか世界的な噂系ニュースとなり、世界的な経済誌であるForbesにまで注目される事態となった。Forbesに筆者の英記名が掲載されることはこれを最後に今後ないはずである(笑)。

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Forbesの記事に、Zenji Nishikawa登場

 デマとなってからは、筆者の元にも「セガが日本で次世代Xboxを次世代ドリームキャストとして出す情報をつかんだのはお前か」という「はあ?」としか言いようのない問い合わせが寄せられるようになる。まあ、こうした問い合わせに対して「実はこれこれこういう内容で」とネタを明かしてしまっては意味がないので「今出ている憶測はかすりもしていないよ。次週のファミ通にステイチューンドだぜ」と返信するのに留めた。

 なお、ここまでで、わずか数日の出来事である。

 このままファミ通次号の発売日6月4日がやってきてしまえばよかったのだが、思わぬ伏兵がいた。それは、スクープネタ提供元のセガ自身による予想外な発表であった。

 6月1日に、セガが「セガ60周年記念“GO SEGA”&『龍が如く』コラボ日本酒」の発売を発表したのだ。どういうワケか、「西川善司のスクープはお酒?」という勝手な決めつけがまたまた世界中を駆け巡ることになる。

 「いや待て」と。そもそも「メーカー発表の後に掲載される記事」をスクープとはいわないはずである。この時点で筆者は、ネット界隈には「ただ騒ぎたい人」が大勢いることを知る。

 ただこの「酒騒ぎ」で1つ自分も気づいたことがあった。それはセガは2020年6月3日で創業60周年を迎えるという事実だ。ここで腑に落ちた部分もあった。今回の筆者に与えた「広報すっ飛ばし」の「にぎやかし」特務は、もしかしたら、このあたりの「祝いごと」を絡めたことだったのかも、ということだった。

 だったら、これに便乗しようということで、この酒騒ぎの前後のタイミングで、筆者は自身のTwitterアカウントで、昨年世を騒がせた某女性タレントが秘めたる恋をほのめかす際に用いたとされる「縦読みすると意味深な言葉が浮かび上がる」系ツイートを始めた。しかし筆者の縦読み“ほのめかし”ツイートは誰からも解読されず、無惨にも放置されたままとなった。そう「ダダスベリ」である(笑)。

 ちなみに投稿したツイートは縦読みすると「はあどではない」(ハードではない)、「さけでもない」(酒でもない)、「ねっとぎじゅつです」(ネット技術です)、「ふおぐげーみんぐです」(フォグゲーミングです)、「せがすごい」(セガ凄い)が浮かび上がるもので、初投稿日は5月31日。暇な人は見てみよう。当該記事が載るファミ通が発売日前日の6月3日は「答えそのもの」をつぶやいていたのだが……反応なし(笑)。

 そうそう。6月3日といえば、セガは創業60周年を祝って小型レトロゲーム機「GameGear Micro」を発表している。これも、勝手に「西川善司のスクープはこれか。がっくりだぜ」という意見が世界中に駆け巡る。何度もいうようだが、「メーカー発表の後に掲載される記事」をスクープとはいわないのである。ただ、こうしたネット界隈の「ただ騒ぎたい人」が盛り上げ続けてくれたことで、大注目のまま6月4日に「週刊ファミ通 2020年6月18日号」は無事発売されることになる。関係者によれば、ファミ通の筆者の件の連載記事を翻訳掲載してよいか……といった問い合わせが海外からそこそこあったそうだ。

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GameGear Micro

 なお、発売日前日の6月3日のお昼には、いわゆる「早刷り」版を入手した人がネタバレ記事をネット上に発表することとなり、6月3日の午後には一連の「騒ぎ」は「ひとまずの終焉」を迎えていた。お祭りはイブには終了した感はあった。

 で、改めていうことではないかもしれないが、その件のスクープとは「ゲームセンター向けの次世代ゲーム基板」を「フォグコンピューティング」的に活用してユーザーにゲームプレイ環境を提供する「セガのフォグゲーミング構想」についてであった(詳細は後述)。

 まあ、記事内容に関する意見はいろいろだった。「新ハードの登場デマ」を信じきって勝手に盛り上がっていた人は落胆していたし、純粋に新技術の登場に関心が高い層からは「面白い」という意見が寄せられていた。

 いずれにせよ、これまではインターネット検索しても意味ある解説は出てこなかった「フォグゲーミング」(Fog Gaming)というキーワードを、世界中で(一瞬ではあるが)認知されるように仕向けられたことはうれしく思う。少なくとも、国内外問わず、ゲーム業界関係者の多くは「クラウドゲーミングのようでちょっと違うもの」というところまでは認知が進んだと思われるので、今後、「フォグゲーミング構想」の第2報がセガから飛び出したときには、おそらく世界中の関連メディアが「その第2報」に対して自らの意思で率先して情報を集めて報道することになるはずである。

 蛇足ながら、「セガ印のXboxが登場するかも?」というデマに惑わされず冷静に「そのスクープとはいったい何なのか」を分析されていた方がごくわずかながらいらっしゃったことにも触れておく。ある方は的中率70%くらいのほぼ正解に近い分析をされていた。別の方はセガグループのリクルートサイトの名越稔洋氏のコメントから「現在構想中のゲーム業界初となる革新的なサービス」を見つけ出して、これのことに間違いないと確信を持たれていた。セガの幹部たる名越氏が「フォグゲーミング構想」に参画していることに何の不思議もないわけで、この予想も事実上「正解」といって差し支えない。

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