マスター音源をメディアごとに分けて作成する動きも
現時点で-14LUFSのラウドネスノーマライゼーションを実施しているYouTubeの場合、コンテンツごとにどの程度音量が下げられているのかが簡単に確認できる。動画の画面上で右クリックをして、メニューから「詳細統計情報」を選ぶと、さまざまな情報が表示されるので、「Volume/Normalized」を確認しよう。
下図のように「100% / 47% (content loudness 6.6db」と記載されていれば、動画左下のボリューム設定が100%の場合、コンテンツ本来の音量に対し47%まで下げられて送出されていることを示している。数値にすると6.6デシベル下げられているという意味だ。この場合、デシベル値とLUFS値は同義と考えてよい。
上記の情報は、筆者が権利を保持するクラシック音源を意図的に音圧を上げてアップロードしたもので、次の図のように、アップロード前の測定では、-8.1LUFSを示している。これに6.6を加えると-14.7LUFSなので、YouTubeのラウドネスノーマライゼーションである-14LUFSとほぼ一致する。
その一方で、次の図は、同じ音源を、ラウドネス値-14LUFSを狙ってマスタリングしたものをアップロードした動画の詳細統計情報だ。「100% / 100% (content loudness -1.5db)とある。まさに、ほぼ狙った通りの音圧なので、ノーマライゼーション処理が入っていないことを意味する。-1.5dbとあるのは、逆に少しだけ音量を上げて送出していることを意味するが、これは、許容の範囲内だ。再生される音を聴いていただくと、ダイナミックレンジが広く、クレッシェンドで、ピアニシモからフォルテシモに移行する部分など、抑揚とメリハリに満ち、モーツァルト本来の音楽が奏でられている。
ストリーミングサービスが主流になる中で、これまでのCDと同様に音圧を稼いでばかりでは、意図する結果が得られないことは明白だ。この点を、問題視するアーティストの中には、マスター音源をメディアごとに分けて作成する動きもある。CDの時代は「個性」として済まされていた音圧に対する考え方だが、「放送」に近い形態で音楽がリスナーに届けられるストリーミングサービスでは、その考え方を変えなければならない時期にきたようだ。
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