米司法省、ロシア諜報員6人をサイバー攻撃関与で起訴 ウクライナ停電や米病院マルウェア感染など
米司法省がロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)の諜報員6人を起訴した。ウクライナの大規模停電や世界の病院や政府のシステムをダウンさせたマルウェア感染など、過去数年の世界でのサイバー攻撃に関与したとしている。
米司法省(DOJ)は10月19日(現地時間)、ピッツバーグの大陪審が15日、ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)に所属する諜報員6人を、国際的なサイバー攻撃と虚偽情報の操作を行ったとして起訴したと発表した。
6人は、2015年〜2016年のウクライナの大規模停電を引き起こしたマルウェア攻撃、2017年の仏選挙でのシステムへのサイバー攻撃、2017年に世界中のコンピュータを破壊したマルウェア「NotPetya」による攻撃、平昌冬季オリンピックを狙ったサイバー攻撃(この大会ではロシアの選手がロシア代表として出場できなかった)、2018年の化学兵器ノビチョクによるセルゲイ・スクリパル氏暗殺に関する調査の妨害、2018年と2019年のジョージアの企業と政府機関をターゲットとしたサイバー攻撃に関与したとされている。
このうち、アナトリー・セルゲイビッチ・コバレフは、2018年7月にロバート・ムラー特別検察官(当時)が民主党のメールをハッキングしたとして起訴したGRUの諜報員の1人だ。
DoJは「われわれは犯罪を犯したロシア政府当局者に責任を負わせ、犠牲者に代わって正義を求める義務がある」としている。また、捜査に協力した企業としてGoogle、Cisco、Facebook、Twitterの名を挙げ、謝意を示した。
英政府は同日、これらの諜報員が東京2020オリンピック・パラリンピックに対してもサイバー攻撃を行ったと発表した。ターゲットには大会主催者だけでなく、スポンサーも含まれていたという。
【更新履歴:2020年10月20日午前9時10分 英国政府の発表を追加しました。
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