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「Pixel 5」の天体撮影はPixel 4から進化したか 満天の星空で比較(2/2 ページ)

GoogleのAndroidスマートフォン「Pixel 5」では先代のPixel 4からアウトカメラの構成が変わった。これによって、Pixel 4では天の川も撮れた天体撮影機能がどう変わったかを満天の星空で比較した。

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Pixel 5超広角カメラで撮影 16秒露光×15枚合成、ISO1047(有効画素数は約1600万画素のはずだが、記録上は1220万画素になる)

 広角カメラが35mm判換算約27mmであるのに対し、超広角カメラは換算約16mmであるため、星空も写る範囲がそれだけ広くなる。上の写真は広角カメラでの作例と同じ位置から撮影しているが、広角では写っていなかったデネブまでが収まっている他、「群馬県」の看板の下にあった土星と木星も明るく捉えている。天の川の濃淡も分かる。

 しかし、残念な部分もある。全体的に緑がかっており、横縞のような周期的なノイズも観察できてしまう。

 これは広角カメラのイメージセンサーとの違いが原因と思われる。超広角側は有効画素数1600万画素で、画素ピッチは1.0μm。画素ピッチは大きいほど光を捉えやすいため、1.0μmの超広角側センサーは1.4μmの広角側センサーに比べて不利である。その上、レンズ開口部もF2.2と、広角側のF1.7より暗い。


広角カメラと超広角カメラのスペックの違い(公式ページより)

夏の大三角に向けた別カット(Pixel 5広角カメラ)

夏の大三角の位置 上からデネブ、アルタイル、ベガ

同じカットを超広角カメラで撮影

 EXIF情報を見ても広角側での撮影はISO400程度で撮影できているのに対し、超広角側ではISO1000まで上がってしまっており、これがノイズの多い原因の一つと思われる。

 ただ、Pixelシリーズの天体撮影機能は、合計4分間かけて撮影した15枚の画像を重ね合わせる処理をしているため、本来はある程度のノイズは消去できるはずだ(広角側ではそれに成功している)。

 それにもかかわらずこれほどノイズが出てしまっているのは、イメージセンサーの限界を感じざるを得ない。

 なぜ超広角側に暗所に弱いカメラモジュールを採用したのかは想像するしかないが、一つは広角側でポートレートモードなどを使う関係で、超広角側は画素数を増やさないと視差による深度計算が細かくできない、というのはあるかもしれない。他にもカメラモジュールの価格面や筐体のスペースの関係から、選択肢が他になかったのかもしれない。

 いずれにしても、Pixel 5の開発チームが天体撮影における超広角カメラの画質を重視したとはいえなさそうだ。

GoogleがPixel 5で重視したこと

 これは筆者の考えだが、コンピュテーショナルフォトグラフィーは大きく2種類に分けられると思っている。

 一つは「撮影後」の写真に対し、スマホの計算能力でボケやライティングなどを調整する技術。もう一つは「撮影時」に複数枚の写真を撮影するなど工夫をすることで、広いダイナミックレンジの撮影やノイズリダクション、超解像などを行う技術だ。

 Googleは、後から人物のライティングを調整できる「ポートレートライト」機能などをPixel 5で追加したため、「撮影後」の技術については進化したといっていい。

 一方で「撮影時」の技術については、Pixel 3で搭載された超解像ズームやPixel 4で搭載された天体撮影モードのときほどのアップデートはなかった。こちらについては足踏みしている状態に見える。


Pixel 4の発表時、コンピュテーショナルフォトグラフィーを説明したマーク・レボイ教授 現在はGoogleを辞め、米Adobeに転職した

 もっとも、Pixel 5は当時のハイエンドスペックを搭載したPixel 4とは思想が異なり、ミドルレンジのSoCを採用して本体価格を下げ、普及を狙ったモデルだ。どこかで技術進化の取捨選択をしなくてはならないことは理解できる。

 天体撮影以外の機能も眺めれば、Pixel 5は日常使いのスマートフォンとしては十分な性能を持っている。90Hz駆動のディスプレイは使っていて気持ちいいし、ミドルレンジとはいえSnapdragon 765Gは一般的なアプリの動作で支障はない。ハイエンドなグラフィックス性能を要求するゲームはGoogleのクラウドゲーミングサービス「Stadia」と5G通信でやればよさそうだ(ただしStadiaの日本展開は未定)。背面の指紋認証も、正直Motion Senseによる顔認証より使いやすい。

 これはこれで完成度は高く、価格帯も考えれば世界的にシェアの大きいロー〜ミドルレンジのAndroid市場で存在感を放つポテンシャルは持っていると思われる。

 カメラに話を戻すが、広角カメラのセンサーは(おそらく)3年連続で同じものを採用しており、枯れて扱いやすいとはいってもそろそろ限度があろう。Pixel 5が売上面で成功を見せれば2021年のPixel 6(仮)も同じ路線となることは十分考えられるが、筆者としてはカメラやSoCなどを刷新したハイエンドモデルのPixelも見たいところだ。

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