“子供の手”をリアルに体験する外骨格グローブ「HandMorph」 シカゴ大学など開発:Innovative Tech
子供の立場を体験し、環境を改善するのに役立つという。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
米シカゴ大学、筑波大学、独ルール大学ボーフムによる研究チームが開発した「HandMorph」は、子供の手の動きを体験できるウェアラブル型外骨格グローブだ。着用者の手の動きを子供の手の動きに瞬時に変換し、実物に触ったり持ったりすることで、子供の立場を体験できる。
同研究チームは他人の視点をテクノロジーの技術で体験するプロジェクトを探求しており、過去に子供の目線をシミュレートしたシステムも開発している。VR HMD(ヘッドマウントディスプレイ)とステレオカメラモジュールを用い、着用者の視点を自分の腰まで下げることで、子供の目線を提供するシステムだ。
この延長線上で開発されたのが、今回紹介する、手に装着する外骨格デバイスだ。着用者の手の動きを子供の手を想定したゴム製の指のセットに伝達させることで、何かをつかむ把持(はじ)範囲を狭くする。また同時に握力も小さくなり、重たい物を持つ行為も困難になる。
子供の腕は短いため、腕の長さに合わせたワイヤを用い、デバイスと腰とをつなげ、到達できる範囲を狭くしている。これによって、より高く、より遠くの場所に簡単には届かなくなる。
このデバイスは3Dプリンタを活用して数百円の材料費で製作できる。コンピュータやバーチャルデバイス、その他電子機器を利用していないため、安全で容易に作成できる他、遅延なしにリアルタイムの触覚を提供できるのが特徴だ。
これにより、外骨格グローブを着用しボールなどの対象物をつかむと、対象物を大きく感じ、通常なら半開きの手でつかんでいたものを全開にしなければならない、つかみにくさも体験できる。お椀などの複雑な形状になると、通常の持ち方では持てないことも分かる。
複数の被験者に外骨格グローブを着用し体験してもらった結果、まず手の大きさの違いに驚き、取っ手が付いていないタンブラーやペットボトルをつかむのが難しいなど、体験ならではの発見をしていた。
子供の手を体験する試みはバーチャルの世界でも容易に行えるだろうが、今回のように実世界で実物とやりとりしながら体感する行為の方が、他の人の行動を理解するのにより役立つのではと考えられる。
今回の外骨格グローブの応用例として、子供用のトランペットをデザインする補助ツールとして活用する実験も行っている。
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