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M1版MacとPS5、最新ハードに見える「快適さを生み出すため」の共通点(1/3 ページ)

PS5とM1 Macの両方を体験した西田宗千佳さんは、これら最新世代マシンに共通する何かを見出す。

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 今秋の新製品が出そろった。その中でも、体験を変える力をもつハードウェアが「M1搭載Mac」と「PlayStation 5」、「Xbox Series S/X」だろう。どれも「速度が体験を変えてしまっている」のだが、古典的な意味での「高性能」とは少し違う、と筆者は考えている。

 あえてこれらの機器の共通項を考察してみたい。そこには、「個人向けコンピュータ」の一つの未来があるように思えるからだ。

この記事について

この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2020年11月23日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額660円・税込)の申し込みはこちらから

M1はなぜ「消費電力が少なくて速い」のか

 M1搭載Macは速い。そのことは、多数の記事やSNSでの反響からも明らかだろう。

 ただ、M1の価値をベンチマーク上の速さだけで測るのはあまり適切ではない、と思っている。確かに、Intel版Macに比べて高速になっていることが重要ではあるし、コスト的・消費電力的に考えても圧倒的な性能なのは間違いない。

 だが、何より重要なのは「ノートPCとして快適である」ということだ。負荷がなかなか上がらず、負荷が上がっても発熱が小さく、ファンの音もしない。M1は明確に、ハイエンドジョブではなく一般的なノートPCとしての作業をターゲットに開発されている。

 一般的な処理における発熱=消費電力が小さい理由は、おそらく、M1が搭載しているCPUコアのうち、効率の良さを重視した「高効率コア」の性能が高いため、という部分が大きそうだ。

 Appleのハードウェアテクノロジー担当上級副社長であるジョニー・スルージ氏は、M1の4つの高効率コアは、それだけでデュアルコアCPUを使ったIntel版のMacBook Airと同等のパフォーマンスである、と説明している。

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M1の高効率コア4つは、デュアルコアのMacBook Airの性能に匹敵

 しかもこの高効率コアの消費電力は、いわゆる「高性能コア」の10分の1しかない。この言葉が正しければ、Macにおける「日常的な作業」のかなりの部分は高効率コアで処理され、不足した時に高性能コアに回る……と考えられる。

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M1の高効率コアの消費電力は、高性能コアの10分の1に抑えられている

 事実、高負荷時の発熱だけを比較すると、M1版でもそこそこな温度になる。最も熱くなる部分で比較すると、同じMacBook Proの場合、Intel版は40度前後、M1版は38度前後だった。高効率コアがいつも回っているなら、M1だってそれなりに熱くなっているはずなのだ。逆説的に言えば、高効率コアが良い仕事をしている分、「普段使い的な快適さ」ではIntel版に勝る状況なのだろう。

 macOS Big Surは、この「2つの性能の違うCPUコアが混載している」状況を想定し、タスクを効率的に割り振るようになっている。もともとiOSやmacOSには「GCD」(Grand Central Dispatch)という並列化の仕組みがあるのだが、これも非対称なCPUコア混載に有利となる。

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WWDCでの資料より。macOS Big Surは、M1のような非対称型マルチコアプロセッサに最適化した構造を持っている

 こうした非対称なCPUコアを混載することを、俗に「big.LITTLE」という。もはや珍しいことではなく、スマートフォンの省電力化にも大きく寄与しているのだが、PCではあまり有効に使われてこなかった。

 Intelも「Intel Core processors with Intel Hybrid Technology」(通称Lakefield)でbig.LITTLE型プロセッサを市場投入しているが、こと性能面ではあまり振るわない。どちらかというと、消費電力低減や実装面積の小型化を志向したプロセッサといえる。TDPは7Wで、タブレット向けだ。

 Appleの場合には、A14をそのまま使うのでなく、結果的に、同じ技術を使いつつ「M1」というプロセッサを作った。A14のTDPは6Wといわれており、あくまでモバイルの枠内にある。しかしM1のTDPは10Wもしくは15W。もう少し電力を使えることを前提に、「高効率コアでもPC的な処理を担える」レベルになっているバランスなのが秘密の一つではないか、と思う。

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