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最安M1 Mac mini、まだApple Silicon最適化されていないPro Toolsの性能に脱帽iOS音楽アプリプロデューサーがM1 Macを使ってみたら(1/2 ページ)

Rosetta 2で動く、まだM1に最適化されていないDAWはまともに動くのか、検証してみた。

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 M1 Macと音楽系クリエイティブワーク周辺の話題を紹介する連載の第2回目は、デジタル・オーディオ・ワークステーション(DAW)を巡る状況について雑感をお届けしたい。筆者は普段、録音や編集の現場では、米Avidの「Pro Tools」をメインに利用し、趣味の音楽制作では、「Logic Pro」(macOS Big Sur以降はXが取れた)を利用している。今回、Apple Siliconには非対応のPro Toolsの検証を実施した。筆者のApple Siliconマシンは、Mac miniの8GBメモリ、256GB SSDという最安値構成モデルだが、Intel Macと比較したところ、その驚くべきパフォーマンスに脱帽してしまったのだ。

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Mac miniの設置場所としてFOSTEXのスピーカーの上がサイズ的にピッタリ。利便性を考慮し裏向きに置いたのでスピーカーユニットの前にケーブルが垂れ下がり、リスニング環境としては最悪……。

Apple Silicon対応のPro Toolsはいつ登場するの?

 筆者が業務で利用しているPro Toolsは、12月中旬の時点でmacOS 11(Big Sur)には非対応だ。サイトには、「Coming Soon」とある。1つ前のmacOS 10.15(Catalina)に対応したのは、2019年の12月中旬だったので、そろそろ来てもよいことだと首を長くして待っている。

 ただし、上記の話は、あくまでもIntel Macでの話。Apple Siliconへの対応となると、まだまだ先の予感がする。というのは、サイトには、「Big Sur Apple M1 Processor(Rosetta)」「Big Sur Apple M1 Processor」ともに、「Not Yet Supported」と素っ気ない文言が踊っているからだ。

 ただ、急ぐ必要はないと思っている。Pro Toolsは、スタジオ系の録音現場ではデフォルトDAWとしてグローバルに普及している。プロの現場では、新しさより、安定性や確実性が求められるので、新アーキテクチャへの対応の遅れについて、現場から不満の声は大きくないのではないか。筆者自身も、安定性を確保した上でのリリースを望む。

 余談だが、プロが利用する、あるレコーディングスタジオでは、2000年代中期のDigidesignブランド(Avidブランドへの変更前)のPro Tools HDシステムがいまだ現役で活躍していた。録音が終わり、帰り際にラフミックスのオフラインバウンスを依頼したのだが、「できません。リアルタイムのみです」との返答に、「ああ、昔のPro Toolsは、バウンスの時間=リプレイ再生を聴く時間だった」とノスタルジックな気分に浸らせてもらった。

あまりにノートラブルで使えてしまうので拍子抜け

 そんな、Apple Siliconに未対応のPro ToolsをM1 Mac miniで試した。バージョンは、最新版の「2020.11」。といっても、実際の録音現場では、トラブルが怖くて使えないので、以前録音したプロジェクトに対し、プラグインを刺して音を重ねたり、トラックダウン時のオフラインバウンスの速度を計測するといった、ポストプロダクション的な使い方を試すことにした。録音現場への投入は、正式サポートがアナウンスされた後に行いたい。

 Pro Toolsを起動するためにまずやらなければならないのは、iLok License Managerの準備だ。iLokは、多くの音楽ソフトウェアで利用されているライセンス管理システム。これがないと、Pro Toolsを起動させることはできない。とはいえ、iLok License Managerは、M1 Macに正式対応していない。つまり、Rosetta 2を介して起動することになる。

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ライセンス管理システムの「iLok License Manager」もRosetta 2を介して起動することになる

 ちなみに、他のMacでUSBドングルにライセンスを移動しておき、そのUSBドングルでPro Toolsを起動する方法もあるのだが、利便性やUSBドングルにトラブルがあった場合を考え、iLok License Manager経由のクラウド認証が可能かどうかを試しておきたかった。

 iLok License Managerは無事起動し、Pro Toolsも難なく立ち上がった。試しに、192KHz/24bit録音の24トラックのプロジェクトを読み込んでみたら、こちらも問題なく再生できる。コンプレッサー、ディエッサー、リバーブ、リミッター、イコライザーなど、主だった付属プラグインも問題なく動作した。付属プラグインも、M1 Macには非対応なので、全てRosetta 2で動作していることになる 。

 試しに、バッファサイズを最小の「128サンプル」に設定し、繰り返し再生したり、新規にトラックを追加して音を重ねてみたりと、普段の作業をシミュレートしながら、一通りのプロセスを踏んでみたが、特段、問題もなく普通に使えた。あまりにもノートラブルで使えてしまうので、拍子抜けだ。バッファサイズを最小にしたのは、バッファサイズが小さいときに、録音や再生が突然停止するCPUエラーを、MacBook Proを使った出先録音の現場で幾度か経験しているからだ。

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