拡大するEC市場と限界が見えた物流業界 楽天と日本郵便のタッグは何を目指すのか
楽天と日本郵便が、物流事業の効率化に向けて戦略的提携を結んだ。今後ECサイトの需要が数年で約3倍に膨れ上がると見越し、新しい物流プラットフォームの構築を目指す。
楽天と日本郵便は12月24日、物流事業の効率化に向けて戦略的提携を結んだと発表した。コロナ禍で生活の在り方が変化する中、ECサイトの需要が今後数年で約3倍に膨れ上がると見越し、楽天が持つIT技術と日本郵便の物流網などを組み合わせ、配送業務の効率化を実現する新しい物流プラットフォームの構築を目指す。
楽天が日本郵便と手を組んで目指すのは安定的な配送網の確保だ。日本郵便によると、フリマアプリやECサイトの市場拡大とコロナ禍における巣ごもり需要の影響で、宅配便の需要が急拡大しているという。同社の衣川和秀社長は「取扱量が増えるのはうれしいことだが、今のうちに手を打たないと5年後には安定な配送を提供できるのか……」と不安を漏らす。
両社は“新しい生活様式”への移行が進むにつれ、この拡大傾向がさらに進むと予想。宅配便の需要が急拡大する中で、少子高齢化に伴う労働人口の減少がさらに加速すると、現在の体制では業務を回せなくなると日本郵便は危惧している。
両社は、それぞれが持つデータを共有することで配送業務の効率化ができると見込んでいる。衣川社長は、楽天が注文を受けた段階で日本郵政に情報を共有すれば、早い段階で配送の準備ができると期待している。
「荷物を引き受けた段階から早いうちに(配達担当者など)次の段階に情報を伝達できれば、今と同じ労働力でも効率的に作業できるようになる」(衣川社長)
楽天の需要予測によって、配送を依頼される時期や荷物の種類が事前に分かれば、さらなる効率化を実現できるとして、2021年3月までをめどに共同で実証実験などを行う。
構築する物流プラットフォームを共同事業化し、新会社として立ち上げることも視野に入れる。物流網の逼迫(ひっぱく)を社会課題と位置付け、解決に向けて将来はさまざまな事業者の利用を受け入れるという。
今後は、倉庫の自動化技術やAI、ドローン、自動配送ロボットなどの技術の活用なども探り、採用が決まったものから開示していく。加えて、金融の領域ではキャッシュレス決済サービスの連携、モバイルの領域では楽天モバイルの事業拡大に向けた日本郵政の物流網の活用など、さまざまな分野での提携も検討。21年3月までに実行に移すとしている。
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