InDesignの出力環境を支えたプリプレスへのサポートと日本語フォントアーキテクチャの進化 InDesign日本語版発売20周年(後編)(2/2 ページ)
InDesign日本版20周年記念レポート、後編はAdobe担当者へのインタビュー。
――InDesignはこれからどんなユーザーに新しく使ってもらえるとうれしいですか?
同人作家にも使ってほしい
岩本 より多くの方に使っていただきたいですね。京極夏彦さんのようにInDesignでストーリーの演出も考えながら書かれるように、同人でさまざまなコンテンツを流通される方にも積極的に使っていただければと思います。いろんなフォーマットが扱える汎用的な製品として、PDF入稿やオフィスでのプリントは高い精度が出ますので、フォント環境のサポートも含めて活用されることを望んでいます。それから、Publish Onlineをもっと活用してもらえたらいいと思います。どなたでも簡単にWebブラウザで閲覧できる形で公開できます。
――山本さん、制作のご苦労も含めて、小塚明朝体から現在に至るまでの中で思い出深いフォントは何でしょうか
山本 小塚明朝や小塚ゴシックを最初に手がけたとき、まずは開発ツールの改良と整備が大変でした。1990年代前半のプロジェクトとして思い出深いですね。1992年にCIDフォントにアーキテクチャが移り変わるタイミングでリリースし、OpenTypeへの流れをつくることができたといえます。現在、小塚ファミリーは「令和」の合字を含めたAdobe Japan 1-7の規格までサポートしています。
――ATC(Adobe Type Composer)の開発思想が現在のInDesignの文字組み設定に生かされている部分があると思うのですが、山本さんにとってInDesignの文字組み設定はユーザーフレンドリーだと思いますか?
山本 ATCが関係するのはInDesignにおける合成フォントの機能ですね。日本語書体のメインがOCFだった時代、写植ではかな専用フォントがよく使われていました。かなだけを変えることで文字組みの雰囲気が変わるのなら、それを機能として組み込んでしまえばいいのではないかという発想です。同じように欧文を組み替えることもできました。これがInDesignの合成フォント機能につながることになったのです。
岩本 InDesignで使える合成フォントのサンプルファイルはAdobeでも公開しています。これらの設定を参考にして使われたり、同人向けのアンチゴチ風に組みなどコントロールできるのもInDesignの強みです。Adobe Fontを使った合成フォントもお試しいただけます。
山本 InDesignの文字組みアキ量設定の詳細設定は複雑だというご意見は昔からよく聞いています。そのために何度か改良を重ねて、現在では基本設定と詳細設定に分けて使いやすく改良されています。一般的な制作では基本設定で十分です。
――源ノ明朝・源ノ角ゴシックをInDesignで使うユーザーにとって、注意すべき点は何でしょうか。また、Noto Sansとの違いは何でしょうか
山本 Noto Sans CJKと源ノ角ゴシック、Noto Serif CJKと源ノ明朝は、それぞれ同一フォントを、GoogleとAdobeとで別のフォント名称を採用していますが、フォント名称だけでなく、一部のウェイト(太さ)の名称も異なるものがあります。ただし、それ以外の点ではAdobeとGoogleとで差異はまったくありません。実質は同じフォントとなります。
ただし、Noto Sansは基本的にオープンソースフォントなので、改変や改造して発表することができます。この場合は互換性が崩れると思ってください。
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