開発費73億円で話題の“五輪アプリ”、機能は? 発注元の内閣IT室に聞く
7月に開幕予定の東京五輪に向け、政府が関係者向けに開発を進める健康管理アプリとその開発費がネットで注目を集めている。どんな機能を備えているのか、開発を担当する内閣官房IT総合戦略室にアプリの詳細を聞いた。
「五輪アプリの開発費は約73億円」――京都新聞が2月21日に報じたこんな内容が注目を集めている。このアプリは、7月に開幕予定の東京オリンピック・パラリンピック競技大会(東京五輪)で来日する選手や関係者向けに政府が開発を進める健康管理アプリだ。
この金額は妥当なのか。そんな疑問に対し、平井卓也デジタル改革担当相は24日の会見で「高いか安いかは簡単に申し上げられないが、必要な経費を合計した金額だ」と回答。接触確認アプリ「COCOA」の開発費約4億円との比較については「サポートセンターの構築などの多言語対応、GDPR(EU一般データ保護規則)への対応に費用がかかるため、COCOAとは比較できない」との見解を示した。
73億円をかけて国が作る五輪アプリはどんなものなのか。発注元である内閣官房IT総合戦略室(IT室)の資料や担当者の話からひも解いていく。
情報はクラウドで管理 アプリ内でビザ申請も
アプリの正式名称は「オリンピック・パラリンピック観客等向けアプリ(仮称)」。ユーザーがアプリに入力した健康状態を国が構築するクラウド上の基盤で分析し、新型コロナ感染者の早期発見につなげる。
一般競争入札を経て、IT室は1月14日に契約を締結した。受注者はNTTコミュニケーションズと数社で構成するコンソーシアムだという。
アプリの主な機能は健康管理機能だ。入国希望者にはビザ申請時に同アプリをインストールしてもらい、来日前の14日間、アプリ上で体温を記録する。ビザ申請時に記入したパスポートナンバーや滞在中の移動計画、名前、住所、国籍などもアプリにひも付ける。
入国後も日々の体温を記入してもらい、高熱が続いた場合はアプリ側で警告するとともに関係機関への連絡とPCR検査を促す。検査で陽性反応が出た場合は、厚生労働省の「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム」(HER-SYS、ハーシス)にアプリの情報を引き継ぐ。
ユーザーの位置情報はGPSを使ってスマートフォン内に蓄積。陽性判明後の調査に使う予定で、IT室はCOCOAとの併用も検討している。
出入国管理や五輪の競技会場への入退場などにも活用を検討している。具体的には外務省のビザ発給システムと連携し、アプリ内からビザの申請を受け付けるようにする。また、空港の検疫や税関、入国管理で本人情報をQRコードを使って表示する機能や、競技会場の入退場に活用する顔認証システムと連携させ、現地スタッフがユーザーの健康確認を「○」「×」などで分かりやすく表示する機能なども検討中だ。
ユーザーの多くが海外からの訪日外国人であると想定されることから、多言語サポートも充実させる。英語、中国語、韓国語、フランス語、スペイン語への対応を必須としており、FAQをベースとしたチャットbotや有人のコールセンターを構築する予定だ。
IT室は4月以降にテストを開始し、6月中にアプリをリリース、そして7月23日の大会開幕後にシステムを本格稼働させる方針。大会終了後は入国者の健康管理アプリとしての活用を検討している。
アプリの開発や運用、不具合への対応はIT室が主導するものの、データの連携にはハーシスを運用する厚労省、ビザの発給を担当する外務省など複数の省庁を横断させる必要がある。
IT室を所管する平井大臣も「ハーシスなどよりもいろいろな情報を連携させる必要があるため、結構大変だと思う」と述べるなど、アプリの運用難易度の高さを認めている。
COCOAで発生した不具合の失敗を生かせるか、注目を集めそうだ。
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