MVNOの価値はこれからどう変わっていくのだろうか(2/2 ページ)
大手キャリアが先手を打ってきたことでMVNOはこれからどう変わっていかなければならないのか。西田宗千佳さんが考えた。
情報の面でも公平性が必要、政策内での「MNOとMVNO」の立ち位置を明確に
MVNO各社にとってもそんなことは当然分かっていることではある。
その上で公正競争を維持するには何が必要なのか?
特に重要なのは「これからの施策を決める上での、情報伝達速度の公平さ」だと感じた。
MVNOは、インフラを持つ携帯電話事業者(MNO)からインフラを借りてビジネスをする立場にある。これまで問題になることが多かったのは、インフラを貸し出す際の料金算定基準の公平さだった。もちろんそれはこれからも重要なのだが、それだけではだめだ。
例えば、今回の大手による料金改定はどうだろう? 俗にいう「サブブランド」は有名無実化し、大手のプランの1つになっている。そうすると、これまで「サブブランド」と料金や顧客で競合することになったMVNOにとっては、かなり不利なものになった。サブブランドが価格を下げられる前提となるインフラコスト算定の仕組みは、MVNOにも同じようなタイミングで伝えられてないと、MVNOの施策は後手後手に回る。
5Gになると「情報の意味」はもっと大きくなる。4Gとはネットワーク構造が変わっていくので、料金算定基準もサービス構築の基準も変わる。そこで、大手の5Gインフラ構築の状況と提供のスケジュールなどが見えていないと、MVNOは5Gで後手に回るしかない。それは借りる側の宿命でもあるが、大手だけでなくMVNOが5Gで存在感を示していくには、「大手が展開し終えた後に出ていく」形では厳しい。
5Gは速度だけに価値があるわけではない。ネットワーク構築の柔軟さを活用し、企業向けを含めた新しいサービス形態を生みやすいことに価値がある。MVNOのような事業者は、本来そこでより柔軟なアイデアと身軽さで立ち回り、大手と住み分けていくべきだ。
だとするならば、今後は情報提供も含め、「大手独占にならない」制度作りが求められる。もちろん総務省側はそうしたビジョンを持っており、MVNO事業者側の意見を聞きながら進めるつもりがあるようだが、それをもっとはっきりさせる必要がある。
接待問題などもあって政権に揺るぎもあるが、そうした部分も含め、これからどういう政策を採っていくのか。プランへの文句ではなく、明確な方向性を示す動きがそろそろ欲しいと思う。
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