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動きに貼り付く映像技術「ダイナミックプロジェクションマッピング」の変遷(2/8 ページ)

これまで何度か紹介してきたダイナミックプロジェクションマッピング技術。その変遷をまとめた。

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高速ビジョン

 これら解決の第一手が、東京大学の石川グループ研究室が1992年ごろから研究してきた「高速ビジョン」(高速画像処理技術)だ。高速ビジョンとは、1秒間に大量の枚数を撮影し処理するシステムを指す。当時のビデオカメラは、人間が1秒で認識できる速度に合わせて、1秒間に30枚(30fps)の映像撮影を行っていた。同研究室は、この現状より速く処理できないかと考え、1秒間に1000枚(1000fps)の映像を撮影し、リアルタイムに画像処理することに挑戦した。

 その結果、1995年に高速かつ不規則に動く対象物に対しても追従する高速ビジョンを用いたターゲットトラッキングシステム「SPE-256」を開発し、1000fpsの画像処理に成功した。

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SPE-256の外観

 高速ビジョンは動く物体に対して1000fpsの撮影スピードを発揮するため、さまざまな応用研究が進行中だ。高速ビジョンが先に開発されて、その応用の1つとしてダイナミックプロジェクションマッピングが生まれたという経緯だ。

るみぺん

 高速ビジョンによって素早く動く物体に対して追跡できるようになった。しかし、高速ビジョンの毎秒1000フレームに見合う高いリフレッシュレート、1000fpsの頻度で画像を更新し描画しなければ最大の効果を得られない。高速ビジョンの追跡レベルと同期して、高速にプロジェクターの投影方向を変える技術が必要だ。

 電動雲台に乗せてプロジェクターを回転させ投影方向を変えるやり方では、毎秒1000フレームには到底追い付けないため、別の方法が模索された。石川グループ研究室は2012年、この問題を解決する手法「るみぺん」を発表した。この手法は、2軸のガルバノミラー(回転ミラー)と瞳転送系と呼ばれるレンズ群から構成の高速視線制御ユニット(サッカードミラー)を利用したシステムだ。

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るみぺんの概要図

 このシステムは、プロジェクターからの光線を鏡に反射させながら通過させて対象物に投影する。その際に、追跡する動く物体に対して鏡の角度を動かすことで調整し、プロジェクターを固定したまま投影方向を変える。この方向を変える動きが高速に行えるから、素早く動く物体に遅れない投影を実現できる。

 その実力は跳ねる卓球ボールに合わせて、ボールからズレることなく顔の映像を投影し続けるデモンストレーションで確認できる。

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跳ねる卓球ボールに顔の表情を投影している様子

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