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VL-BusとPnP ISA PCの仕様をMicrosoftとIntelが決める時代、始まる“PC”あるいは“Personal Computer”と呼ばれるもの、その変遷を辿る(2/4 ページ)

そろそろみなさんがご存じの時代だろうか?

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 余談ながら当時のことだからそもそもインターネットもないので、Specificationは紙で入手することになるが、これがなかなか大変である。そうこうしているうちに、オープンインターフェースという会社(AX協議会の事務局が会社化したもの。2011年に破産)がVESAの仕様をまとめて翻訳して1993年に出版しており、これを入手して仕様を確認していたのは筆者だけではないと思う(写真2)。

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写真2:厚みは2cmほど。VL-Bus以外の仕様も全部内包されていたので、まあ厚いのは仕方がない。もう値段は忘れてしまったが、1万円はしなかったと思う。店頭販売はなく、通販のみだった記憶が

 さてそのVL-Busの仕組みは図1のような構造である。

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図1:VL-Busの仕組み

 要するにビデオカードやその他高速I/Oが必要なデバイス向けに、80486のバスの信号をそのまま引き渡す格好だ。破線でVL-Bus Buffer / Bridgeが入っているのは、80486SX/DXに関しては別にBufferもBridgeも必要ないのだが、80386DX(32bit Address/Dataだが、一部80486と信号互換性がないのでBridgeが必要)や80386SX(32bit Address / 16bit DataなのでBufferの機能も必要)、Pentium(32bit Address / 64bit DataなのでBufferの機能が必要)などを考慮したためである。

 さて、このVL-Busの登場は大きな変革となった。その理由は要するにビデオカードが大幅に性能が上がったからだ。前回でもちょっと触れたが、XGA(1024×768ピクセル)やSXGA(1280×1024ピクセル)で256色表示だと60Hzインタレースでフルに画面を書き換えるのに22.5MB/secとか37.5MB/secとかの帯域が必要になる。

 おまけにこのころになるとHi-Color(15ないし16bitカラー:32K色あるいは64K色表示)をサポートしたビデオカードも出てきたから、この場合必要になる帯域はざっくり倍である。もちろん常に全画面を書き換えるとは限らないから、普段のオペレーションではそれほど不満は出ないかもしれないが、ウィンドウをつかんでドラッグするなどの操作になると途端に遅くなるといった、割とストレスの掛かる操作感だった。

 ところがVL-Busにすると33MHz動作でも理論上132MB/secの帯域が確保できる。実際は半分程度だとしても66MB/secで、こうしたビデオカードをフルに使うようなケースでも帯域不足に陥りにくくなる。

 この結果として、これまでDOSベースでは画面が小さい(VGAサイズ)こともあって非現実的だったGUIベースの環境(Windows 3.1とか)が、比較的大画面(XGA以上)でもストレスなく使えるようになり、実際現実的な操作が可能になった。

 筆者の場合で言えば、それまで原稿執筆やNIFTY-Serveの巡回といった作業は、当初がPC-386M(エプソンのPC-9801互換機)のMS-DOS上、次いでMacintosh SE30+Vimage 8 SE/30(外付けディスプレイ用ビデオカード)の構成だったのを、1993年にWindows for Workgroup 3.11+Win/Vという構成のDOS/V機に環境を移している。Windowsだけでなく、(ユーザーは少なかったが)GUIをフルに利用したOS/2 2.xもちょうどこの辺りから登場。やはりストレスなく利用できていたが、こうしたソフトウェアがちゃんと動くようになったのはVL-Busが普及したことに起因する。

 個人的に言えば、このあたりでPCはMacintoshを完全にキャッチアップし、以後性能で言えばずっとMacintoshを上回る時期が始まった(Intel Macが登場する2006年までこれが続いた)と考えている。もちろん操作感とかOSの作りこみ(特にDTP用途向けの色の管理など)などMacintoshが優位に立っている部分も少なくはないが、ハードウェアだけで見ればPowerPCベースのMacintoshは、CPUとグラフィックス性能の両面で、PCの後塵を拝する結果になっていたと思う。

 もっともVL-Busに問題がない訳ではないというか、いろいろと問題はありまくりだった。

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