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VL-BusとPnP ISA PCの仕様をMicrosoftとIntelが決める時代、始まる:“PC”あるいは“Personal Computer”と呼ばれるもの、その変遷を辿る(4/4 ページ)
そろそろみなさんがご存じの時代だろうか?
かくして、MicrosoftはIntelと共同でPlug & Play(挿すだけで動作する) ISAの規格の策定を開始する。正式名称は“Plug and Play ISA Specification”、一般にはPnP ISAと呼ばれたこの規格、1993年1月には仕様のドラフトが完成、1993年5月にRelease 1.0がリリースされるが誤植やミスが多く、最終的に1994年5月に修正版のVersion 1.0aがリリースされた(写真5)。これは要するにマザーボードのBIOSおよび拡張カードに、
- 拡張カードには、自分がどこのメーカーのどんなカードかを識別するためのIDを割り振る(EISAのVendor ID、それと各メーカーが独自に割り振れるSerial/Unique Numberという2つの値を持つ)
- システム初期化時に各拡張カードは自分のIDを申告、必要なリソース(IRQ、I/O、DMA、Memory)を申告し、BIOSがそれを割り振ってくれるのを受けて、そこを使うように設定する
- BIOSは初期化時に拡張カードのスキャンを行い、必要なリソースを重複しないように割り振る
という機能を追加する仕組みだ。これがうまくいけば、BIOSは装着されている拡張カードとその設定のリストを保持するので、あとはソフトがその設定を見ながらデバイスドライバをロードすればいいことになる。
そして案の定、この仕組みは上手くいかなかった。主要メーカー、それこそCreative LabsやAdaptecなどがその代表例だが、こうしたメーカーはPnP ISA対応の製品をリリースした。ところが実際に動かしてみると、
- リソース割り振りに失敗する:そもそもISA Busのリソースが限られており、重複せずに割り振るのがそもそも無理ゲー
- 割り振られたリソースにカードが対応できない:そもそもハードウェア的に自由にリソースを変更できないようになっているカードが少なくなく、BIOSの側でリソースの値を割り振っても、それをカードが利用できないケースが多数発生
- アプリケーションが理解しない:PnP BIOSを経由すればカードの設定を取得できるはずだが、それをやらないアプリケーション多数
というわけで、終いには“Plug & Pray”(挿して、動いてくれと祈る)とか揶揄(やゆ)される羽目になる。
ただPnP ISAの失敗がUSB及びPCIにつながるわけで、意味のある失敗だったのが救いではあったのだが。そしてPCというものの「仕様」を定める重要な役割を担うメーカーとして、IntelとMicrosoftが大きくクローズアップされることになる、その最初の出来事である。
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