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IT用語から差別や偏見一掃へ、業界で進む言い換え ホワイトハッカーもダメ? いやそれってそもそもIT基礎英語(2/2 ページ)

master、slave、black、white。こういった言葉がIT用語では多く使われているが、それらを是正しようという動きがある。

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 master/slave追放の動きは業界でほぼ一致している。例えばAppleもこの用語の使用を禁止し、代わりに「primary/secondary」「primary/replica」「main/secondary」「host/client」などの組み合わせを使うのが適切とした。

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Apple Style Guide

 人種だけでなく、民族や性別の偏りが問題とされた用語も言い替えが提言されている。例えば「Chinese wall」という表現。もともとは中国の万里の長城の意味だが、インサイダー取引などを防ぐ目的で企業の部門間に設けられた情報の壁のことをこう呼ぶようになった。けれどIBMはこれが「民族性への不適切な言及」に当たると判断し、「ethical wall」(倫理の壁)や「firewall」(防火壁)への言い換えを促す。

 その背景には、米国でアジア系への偏見に根差すヘイトクライムが後を絶たない問題もありそうだ。トランプ前大統領は新型コロナウイルスのことを執拗に「Chinese virus」と呼び続けた。

 性別関連では、「man hour」「man day」という用語が問題視された。これは平均的な労働者1人が1時間または1日にこなす仕事量を表す用語だが、「『(男性を意味する)man』という用語を全労働者の代表として使うことは偏っていて排他的」とIBMは断定。代わりに「person hour」「person day」などを使用すべきとしている。

 白か黒かで善悪を区別する表現も不適切とした。例えば犯罪に加担する悪者ハッカーの「black hat hacker」は「attacker」(攻撃者)に、善玉ハッカーの「white hat hacker」は「offensive security researcher」(攻撃的なセキュリティ研究者)にそれぞれ言い替える。ちなみに日本語では「ホワイトハッカー」と言うこともあるけれど、この「hat」を省略した表現は英語では見かけない。

 一方でIBMは、例えば「black box」「blackout」「dark mode/light mode」などの用語は善悪の価値観を伴わないとの判断から、引き続き使用できるとした。

 こうした用語の言い替えを推進する根拠として各社が繰り返し強調しているのが、多様性を尊重する「inclusive」の考え方。この用語についてはいずれ取り上げるとして、確かに理念としては素晴らしいと私も思う。けれどiPhoneの絵文字で肌の色が選べるようになった時、「アジア人は黄色を使えってこと?」と戸惑ったことを思い出した。

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