Apple Musicがサポートする「空間オーディオ」とは何か チャンネルベースとオブジェクトベース、Dolby Atomosと360RA(4/4 ページ)
Appleやソニーはいずれもオーディオを空間に再配置する技術に注力している。その仕組みを西田宗千佳さんに解説してもらった。
フォーマット戦争は起きず「気軽に新しい体験」が広がる
Dolby Atomosと360RAについて、なんとなくお分かりいただけただろうか?
残る問題は1つ。「フォーマットが分かれて、サービスも分断されてしまうのでは」という点だ。いわゆるフォーマット戦争である。
だが、現実問題として、消費者的にはそうなりそうにない。結局は「どちらの楽曲も提供する」というパターンになりそうだからである。
360RAに対応しているAmazon MusicやDeezerは、同時にDolby Atmosにも対応している。Appleも現状、スタート時点で公式にサポートするのはDolby Atmosのみだが、ソニーとは360RAのサポートも含めて話し合いを持っているようで、Dolby Atmosしかサポートしない、と決めているわけではないようだ。
どちらにしろ、課題は楽曲数。今はまだ、空間オーディオ対応楽曲は数千曲しかない状況で、まだまだ足りない。Dolbyもソニーもオーサリング環境を広げるべく努力中で、次第にコンテンツは増えていく可能性が高い。
ポイントは、「意外と誰にでも違いが分かる」ことだ。
派手に音が動くようにオーサリングされた曲はもちろんだが、音が動かない楽曲であっても、コンサートホールの広さを感じさせたり、楽曲に合った空気感を持たせたりと、できることは多数ある。それを体験するのに、高価で特殊なハードウェアは必要なく、「スマートフォンと対応ヘッドフォン」さえあればいい。
どのフォーマットでも、最適化を諦めて聞くだけなら、正直、ちゃんと音楽が楽しめるクオリティーがあるなら、どんなヘッドフォンでもいいのだ。
そういう手軽さの上に「特別な体験」があるのが空間オーディオの面白さだ。だからこそ、Appleやソニーはそこにビジネスチャンスを感じているのである。
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