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もがくオーディオメーカー コンシューマーオーディオはどこへ行くのか? ゼンハイザー、オンキヨーの身売りで考える小寺信良のIT大作戦(1/4 ページ)

苦境にあえぐ名門オーディオメーカー。ドイツと日本の老舗が相次いで身売りすることになった。その原因を探る。

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 ドイツの名門オーディオメーカー、ゼンハイザー(Sennheiser)のコンシューマー事業が譲渡されることとなった。

 譲渡先はスイスの補聴器メーカーであるSonova。同社はコンシューマー事業を持たないこともあり、市場には好意的に受け止められているようだ。社員などもそのまま移籍し、ゼンハイザーのブランドはそのままで販売や開発が継続されるという。

 買収と譲渡は、ニュアンスが違う。買収はどちらかというと会社丸ごと買われて子会社化するような際に使われる。一方譲渡とは事業譲渡のことであり、ほとんどは一部の事業の売渡で、元の会社の不採算部門を切り離す際に使われる。今回の譲渡では、コンシューマー事業を切り離し、元のゼンハイザーはプロフェッショナル事業に集中するという。

 コンシューマーにおいてゼンハイザーは、高級ヘッドフォン・イヤフォンメーカーとして知られる。しかしいたずらに高級モデルだけをリリースするのではなく、廉価でも質のいい製品をバランス良く出していた。特に1997年発売の「HD600」は、2017年にハイレゾ対応版として復刻され、いまだによく売れている。

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ゼンハイザーの名機「HD600」

 新技術への取り組みも早かった。まだノイズキャンセリングが珍しかった2003年に、普及価格帯でオーバーヘッド型「PXC2500」を投入した。また2008年には市場に先駆けて完全分離型イヤフォン「MX W1」を発売し、イヤフォンの未来像を決定づけた。

 その後も優秀な製品をリリースしてきたが、主力の高級ヘッドフォンは次第にブームから外れてきた。高価格製品はマニアを唸(うな)らせるが、毎年買い換えてくれるようなものではない。今風の完全ワイヤレスイヤフォンのリリースも2020年と、2008年に世界初というアドバンテージを生かせなかった。

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