Excel世界大会も登場、今改めて考える「eスポーツとは何か」(3/3 ページ)
Excelの技を競う世界大会が「eスポーツ」として開かれる。改めてeスポーツの定義について、西田宗千佳さんが考えた。
「実況」「解説」の魅力が価値を高める
eスポーツとはニッチと一部のマスから構成されているわけだが、一方、「eスポーツを観戦する」という行為がマスになっていく過程では、極めて重要な要素もある。
それが「実況者」「解説者」の存在だ。
スポーツとeスポーツが持つ共通の特徴として、「プレイ人口よりも多くの視聴者が存在する」ということがある。そしてそれはメジャースポーツになればなるほど顕著だ。
視聴者のほとんどは、スポーツのプレイヤーほどゲーム内容に詳しくない。eがついてもそれは同様。メジャーなeスポーツは「そのゲームに詳しくなくても、なんとなく面白い」ものだ。
一般のスポーツでは、マイナー競技の場合、プレイ人口と視聴人口の差は小さくなりやすい。要は「プレイヤー自身が楽しむために見る」比率が高くなる。だがeスポーツでは、競技=ゲームプレイそのものの特殊性を楽しむ、という要素もあるので、プレイ人口としてはマイナー競技であっても、プレイヤーより圧倒的な数の視聴者がいる……という状況が生まれる可能性がある。前出のRTAなどは、プレイヤーは限られるのに視聴者は多いeスポーツの代表、と言ってもいいだろう。
一方で、コンピュータの上で成立する競技は、どんなものでもeスポーツになり得る。
だから「実況者」「解説者」が重要なのだ。
一般のスポーツ中継でも、良い実況者・解説者による中継は、そのスポーツを知らない人を熱心な視聴者に引き込む可能性を持っている。eスポーツはそれがより顕著だ。技術的な理解が必要だったり、ハイコンテクストな内容だったりが面白さに直結している場合が多く、それは「一見さん」には理解が難しい。
シンプルに勝ち負けが見える格闘ゲームであっても、詳細な技の駆け引きなどは、ちゃんとした実況者・解説者がいると理解度が大きく変わる。この辺もプロスポーツと同じなのだが、一線級の人々は、プレイを見る目の解像度がまったく違う。
冒頭に挙げたExcelの例は、これがとても難しい。どこが興味深く、勝ち負けがどうなっているかの理解が大変である。ハッキングなどもeスポーツになり得ると思うのだが、その過程をどう解説すれば、知識が少ない人にも楽しんでもらえるだろうか? これはなかなか難しい課題だ。
もちろん、少ない視聴者でもeスポーツはeスポーツだ。だが、今後も大きくなっていくのは「分かりやすさ」を備えた競技であることは間違いない。その時、一見複雑で理解しづらい要素があっても、それをうまくビジュアライズしたり、解説したりする行為と組み合わせて中継されれば、思いもよらない行為が「eスポーツ化」する可能性もある。
そんなふうに考えると、マイナースポーツのメジャー化も、eスポーツのブレークも、できることが見えてくる。
関連記事
- 「次のWindows」も発表間近な今、各社OS戦略を考える Google I/O、WWDCから
Apple、Google、Microsoftの主要プラットフォームが最新OSをリリースする。彼らの方向性はどのように異なるか、西田宗千佳さんが分析する。 - コロナ禍「日本のIT敗戦」の深層を考える
西田宗千佳さんが、コロナ禍に対する国の施策がなぜうまくいかなかったのかを解き明かす。 - Excelがeスポーツに? 財務処理の腕を競うイベント開催、Microsoftが協賛
Excelを使った財務モデリングの腕を競うイベントが、6月8日午後8時(日本時間)から開催される。スポンサーとして米Microsoftも参加。試合の様子はYouTubeで配信する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.