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Windows 11戦略で見えてくる、Microsoftの“追い込み”手腕としぶとさ(1/3 ページ)

西田宗千佳さんが、Windows 11に見る、同社の長期戦略について解説する。

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 新しいWindowsである「11」が発表になった。

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Windows 11の画面。スタートボタンが中央寄せになるだけが変更点ではない

 「Windows 10が最後のWindowsじゃなかったっけ」という言葉がネットにはあふれているが、後から説明するように、「まあその解釈も違うんじゃないですかね」とは思う。

 OSの更新という話になって多くの人の顔が曇るのは、OSのアップデートが多数の手間を伴うものだからだろう。

 とはいいつつ、公表済みのWindows 11の機能を見ると、「PCの持つめんどくささ」を解消するものが多いのにも気付く。

 今回は改めて、PCとMicrosoftとはなんなのかを考えてみたい。

この記事について

この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年6月28日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額660円・税込)の申し込みはこちらから。さらにコンテンツを追加したnote版『小寺・西田のコラムビュッフェ』(月額980円・税込)もスタート。

10は「最後のWindowsじゃない」けど「変化点」だった

 今回記事を書く上で、Microsoftに確認したことがある。

 それは「Microsoftは公式に『Windows 10は最後のWindowsである』というステートメントを社として出したことがあるか」ということだ。

 これはどうやら、(今のMicrosoftの認識では、という留保は付けるが)「ノー」であるようだ。一部のMicrosoft関係者がそうした表現を使ったことがあるが、社としては最後という言い方はしていない……が公式コメントになる。

 じゃあどういうことだったのかというと、「OSをアップグレードパッケージとして購入し、インストールしてもらうというビジネスモデルではなくなる」という話なのだ。

 もちろん、WindowsをインストールしたPCを出荷するメーカーや自作PCのためのライセンスはあるので「無料のOS」になっているわけではない。OSがインストールされている=利用ライセンスがあるものについては、その後のWindowsは「動作が可能であればアップデートを無償で提供する」というモデルになった、というのが正しい。

 考えてみればこれは今のスマホも同じである。Macも同様だ。だから別に特別な話ではない。

 PCに詳しい人には意外なことかと思うが、PCのOSを「パッケージを買ってまでメジャーアップグレードする」人の比率は、そもそもずっと低かった。それなりに高かったのはWindows XP以前の話で、もう20年くらい、世の中の多くは「PCを買い替える時にOSがメジャーアップデートされる」形だったのである。

 Windows 10以降ではそれを積極的に認めた上で、「今後はハードが対応するなら、メジャーアップデートであっても無償アップデートする形にする」としたわけである。それに「Windowsはサービスである」(Windows as a Service)というキャッチフレーズをつけ、より分かりやすくした。Windows 10から11へのアップグレードも「ハードウェアが対応するならずっと無料」なので、この点に変化はない。

 結果として、PCとスマートフォンの間のイメージギャップを1つ埋めたわけだ。スマートフォンだって、同じデバイスの中でのOSメジャーアップデートの回数は限られており、数年たったら買い替えて「新しい世代」になっていく。PCはスマートフォンより買い替えサイクルが長いものの、結局IT機器とはそういうものなのだ。

 名前としてWindows 10は6年間変わらなかった。実際には定期的なアップデートによって中身もUIも変わっていったのだが、それは緩やかなものなので、PCの動向に注目している人以外はさほど大きく反応しなかった。

 ただ、定期的なアップデートもアップデートには違いない。そのたびにOSの動作条件は少しずつ変わり、サポート期間も変わっている。

 直近でいえば、2019年11月のアップデートである「19H2」こと「バージョン1909」からアップデートされていないPCは、家庭向けでは2021年5月11日でサポート期限が切れている。ハードウェアが対応せずアップデートできなかったPCは、ここで寿命を迎える。内部的にOSの寿命がなかったわけでも、ハードウェアがずっと陳腐化しなかったわけでもない。

 これが「分かりにくい」というのも事実なのだ。

 今自分が使っているWindows 10のバージョンが何かをすぐに答えられる人は、相当知識のある人かシステム管理者だけだ。「毎回最新にしている」人はまあ、問題ない。そうでなくなると途端に分かりにくくなる。Microsoftへの取材でも「サポートの時などに正確に伝えるのが難しかった」という話が出てきたのだが、まさにそろそろ大きな問題となる時期だろう。

 今後、Windows Updateにおいては10と11が同居する。次に述べる「Windows 11世代最大の進化点」と筆者が考える「ストア」についても、Windows 11だけでなく10にも提供されることが明言されており、10である不利は、UIを除くと意外と小さい。

 ハードウェアが対応しない人は(自分が求める場合はともかくとして)2025年のサポート終了までWindows 10のままでも良く、PCを買い替える人、もしくはハードが対応している人からWindows 11へ変えていってもらう……。実際のところは、そんな感じではないかと考えている。

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