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「なぜスマホのバッテリーは交換できないの?」 その理由と問題の本質を考える(2/4 ページ)

しばしば聴かれる質問。だが、この問題については誰もちゃんと答えていないようなので、西田宗千佳さんが乗り出した。

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バッテリー交換式は設計に制約が多い

 一方生まれたのが、「バッテリーを取り外せるようにすると制約が多くなる」というジレンマだ。

 バッテリー単体で取り外せるようにする場合、電池は液漏れや衝撃による破損が起きないよう、ちゃんと保護する必要がある。電源端子などの安全性保護も必要だ。特に容量が大きくなった今は安全性がより重要である。

 ラミネートパッケージでない電池は外装が固いケースで覆われているので、取り外せる電池を作るのも容易だ。だがリチウムポリマーでは、電池外装を別途用意する必要がある。

 もちろん、外装はプラスチックなどで作ればいいだけなので、難しい話ではない。事実、デジタルカメラなどで使われている充電池は、ちゃんと外装をつけた安全なパッケージとして供給されている。

 だがそれをするということは、外装の分バッテリーが小さくなるということでもある。スペースが減るのはバッテリー側だけではない。本体の側にも「蓋を開けて安全にバッテリーを収納できる」スペースを用意する必要があるので、容量はさらに減る。動作時間と薄型化を両立させつつ、バッテリーを取り外せるようにするのはなかなか難しいのだ。

消費者が「バッテリー交換できないスマホ」を選んだ

 「でも、スマホと違い、カメラなどはバッテリー取り外し式ですよね」と思う人もいそうだ。

 だが、そこは動作時間とニーズの違い、という点が大きい。

 デジカメは人によって使い方が違う。一日数十枚で済む人もいれば、プロのように1時間で何百枚も撮影する人もいる。大量に撮影する人はそれだけ電力も消費するので、交換バッテリーを持っておいて、すぐに入れ替えて対応できる方が便利だ。

 だが、PCやスマホはそうではない。動作時間は長く、だいたい1日はもつ。そして、誰が使ってもそこまでバッテリー動作時間は変わらない。毎日、もしくは数日に一度充電すればいいなら、「移動中にバッテリーを交換する」というニーズはほとんど生まれない。

 PCでもスマホでも、バッテリー交換式と内蔵式は併存している。今でも業務用スマホの中には、バッテリー交換式をあえて採用するものがある。それは「バッテリーが再充電できるような場所に戻れない」シーンで使うことを想定しているからでもある。あくまでニーズの問題だ。

 PCもスマホも、最初から内蔵式ばかりだったわけではない。内蔵式が登場した時には「不便だ」「不安だ」という非難もあったのだ。だが、内蔵式の方がバッテリー動作時間は長くなること、本体が薄く小さくなることなどが評価され、主流は内蔵式になっていった。

 別にメーカーのわがままで内蔵式になったのではない。内蔵式の製品を消費者が選んだ結果、「スマホやPCでは内蔵式が一般的になった」のである。

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