「歓迎されないオリンピック」は本当か? 実は売れているBS4Kレコーダーと世論の関係:小寺信良のIT大作戦(3/3 ページ)
これまでの批判から手のひらを返したようなオリンピック礼賛。その背景を小寺信良さんが数字から読み解く。
何を意味する? 絶好調なBS4K対応レコーダー
8割以上の競技会場で無観客開催が決定して以降、オリンピック観戦はテレビで、という事になった。そもそも地方在住者にとっては、リアル観戦は最初から視野に入っておらず、テレビ観戦が標準である。
JEITA(電子情報技術産業協会)が毎月発表している統計資料によれば、新4K8K衛星放送機器の出荷台数が、オリンピック開催を前に急増している。前年比で見ると、テレビは4月がピークだが6月も118.9%と好調だ。加えてレコーダーは6月に205.3%を記録するなど、絶好調と言っていい。
前年比ということで、じゃあ2020年はどうだったかといえば、ご記憶の方も多いと思うが巣ごもり需要で家電の売り上げが好調だった年である。その2020年と比較しても、さらに伸びているというわけだ。
正直BS4K放送などは、これまでコンテンツとしてはほとんど期待されてこなかった。それを録画するレコーダーが5月から6月にかけて急激に売れ始めたということは、単なる巣ごもり需要の延長ではない。オリンピックの4K放送を録画して見ようと、多くの人が動き出したからだろう。
これらオリンピックのためにコストを払った人たちは、オリンピックに対して積極的な賛成ではないにしても、許容派ではあるといえる。ネットだけを見ていると、世の中の大半が反オリンピックのような気がしてくるが、それはつまり典型的なフィルターバブルに捕まったということである。
1つの意見にだけ囲まれていると、世の中のほとんどの人がそうだと思ってしまう、一種の錯覚に陥る。世論とは、ネットから拾い上げやすいのは事実だが、そこだけに存在するわけではない。リアル社会の上で見れば、世論は最初から許容派と反対派に分断されていたのだ。
許容派も開催に反対する理由には理解を示すところだし、反対派も好きなスポーツの選手を応援したいという気持ちすら否定するわけではないだろう。相反する2つの気持ちは、お互いを理解している。だから、どっちかになるということはできなかったのだ。
オリンピック・パラリンピックが終了しても、開催したのが良かったのか悪かったのか、誰がどのような切り口で意見を述べるかで、また分かれるだろう。これだけ異例ずくめの大会の開催の是非は、その時を生きている私たちには簡単には決められない。最終的な評価は、この出来事が「歴史」になるまで、長い時を待たねばならないだろう。
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