この3年で4回の著作権法改正、いったいどこがどう変わったのか 忘れられがちな改正内容を整理する(2/3 ページ)
わずか3年で4回も改正された著作権法。いったいどこがどう、いつ変わったのか。その内容は正当なものだったのか。
国内議論を台無しにしたTPP改正
同じく平成30年の、TPPを根拠とする改正を見ていく。ここは5つの柱がある。
- 著作物等の保護期間の延長
- 著作権等侵害罪の一部非親告罪化
- アクセスコントロールの回避等に関する措置
- 配信音源の二次使用に対する報酬請求権の付与
- 損害賠償に関する規定の見直し
1の保護期間延長については、国内の議論では延長しないほうがメリットがあるということでまとまりかけていたにもかかわらず、国際舞台でひっくり返された。これまで映画著作のみ例外的に70年、それ以外は死後もしくは公表後50年だったものが、一律70年となった。なお改正前に50年経過して一度切れた保護期間は、復活しない。
2も大きな改正だ。これまで著作権は、権利者以外の者が権利侵害を訴えられない親告罪であったが、以下の条件を全て満たせば、権利者の告訴がなくても訴訟できる。
- 対価を得る目的又は権利者の利益を害する目的があること
- 有償著作物等について原作のまま譲渡・公衆送信又は複製を行うものであること
- 有償著作物等の提供・提示により得ることが見込まれる権利者の利益が不当に害されること
平たく言えば、原本そのままを販売、公開する海賊版行為は権利者の意思関係なく、著作隣接権者らが訴えられることになる。一方で二次創作やパロディーに関しては、親告罪のままで据え置かれた。つまり原作者がいいと言えばいいという世界はそのままである。ここは評価できるところだ。
3のアクセスコントロールに関しては、一番分かりやすいのがB-CASカードハッキング対策である。B-CASはコピーコントロールではなく、視聴の可否を決めるアクセスコントロールだが、これもコピーコントロール技術同様、不正に回避する行為が著作権侵害とされた。
4は、これまで放送などで音楽を利用する場合、CDなどの原盤から持ってくる場合に、著作権者の報酬請求権が認められてきたが、メディア原盤がない、ネット配信しかない音源に関しては請求権がなかった。だがCDをリリースしない音源もありうることから、そこにも報酬請求権が拡大された。
5はあまり一般の人には関係ないが、これまで著作権侵害に対する損害買収請求は、
- 侵害物の数量×正規品の利益額
- 侵害者利益
- 使用料相当額
のどれかを採用するが、JASRACのような著作権管理団体が管理されたものについては、その団体が規定している著作権使用料を基準に損害額が算出できるという条項が追加された。
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