触れば物体の中身も分かる、布の手袋「eGlove」:Innovative Tech
接触した物体のインピーダンス特性からそれが何であるかを推定する技術。これを布の手袋に組み込んだ。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
浙江大学と東華大学の中国研究チームが開発した「eGlove」は、物体に触れると、それが何なのかをリアルタイムに特定する布製の手袋だ。食品や日用品から体の部位まで、何を触ったのか、どこに触れたかをリアルタイムで高精度に識別する。
この手袋は、センシング技術のSFCS(Swept frequency Capacitive Sensing)を活用。手袋の中指の腹部分に導電性の布(1平方cm)をアイロンと縫合で取り付け、ワイヤを導電性の糸で縫合し電極やセンサーボードと接続する。
電極から流れる交流信号が接触した物体を通過する際、インピーダンス特性の違いにより振幅と位相が多様に変化する。
広い周波数範囲の振幅変化を比較することで、異なる物体や体の部位を識別できるだけでなく、それらの内部組織に関する情報も取得できる。この情報を利用して、深層学習ネットワークで分類する。
評価実験では10種類の日用品、9種類の果物や植物、6種類の体の部位を使って分類テストを行った。被験者には、その後にランダムに異なる物体をつかみ、異なる体の部位に触れるように要求した。
その結果、リアルタイムで平均96.3%の分類精度が得られた。ステンレス製のコップに水が入っているかどうかも判別。交流信号は衣服を通過するため、服の上からでも体のどの部位に触ったかを分類できた。
触れた物体を入力機器として活用することもできる。例えば、ドアノブに触れたら自動的にその部屋の照明が点灯する、コーヒーカップを持ったらコーヒーメーカーが起動する、スマートフォンとスピーカーを順にタッチしたらBluetoothスピーカーが起動して音楽を流す、鼻と口を触った回数をカウントしマスクの交換を促す、触った物の名前や説明が表示される――といった活用ができるだろう。
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