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Appleが買収したクラシック音楽ストリーミング「Primephonic」でApple Musicはどう変わるか? レーベル運営者が分析(1/3 ページ)

音楽ストリーミングサービスの中でもクラシックに特化した「Primephonic」。このサービスを愛用している山崎潤一郎さんが、なぜこのサービスをAppleが手に入れたのか、分析する。

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 音楽レーベル運営者としてクラシック楽曲をApple Musicに提供している山崎潤一郎さんが、Appleが買収し、Apple Musicに新たに加わるクラシック音楽のためのリスニング体験について分析した。


 Apple Musicが、2大クラシック(Classical Music)専門音楽ストリーミングの一角である、「Primephonic」を買収した。

 ちなみに、もう1つはドイツのIdagioだ。今回の買収劇が、クラシックファン=Primephonicユーザーにとって歓迎すべきことなのかどうかは分からない。というのは、Apple Musicに吸収されることで、Primephonicのスタッフによる、人手をかけた秀逸な検索性やファン心理をくすぐるプレイリストが、そのまま引き継がれるのか現時点では不透明だからだ。

 Appleはプレスリリースで「Primephonicの最高の機能を備えた専用の体験を得ることができます」といった趣旨の文言を記しているので、AppleもPrimephonicを吸収しておいて、彼らがつちかってきた珠玉のノウハウを無に帰するようなばかなマネはしないとは思う。ただ、「大丈夫だろうか?」と疑心暗鬼になってしまうほどに、Apple MusicとPrimephonicでは、クラシックジャンルにおけるユーザー体験が違いすぎるのだ。

Primephonicのキメの細かなメタデータが決め手

 例えば、新着作品で何か良いものはないかと「ニューリリース」をブラウズ形式でチェックするとしよう。

 Apple Musicの場合、「ミュージック」アプリを起動し、「見つける」を開き、地の底までスクロールしてやっと表示される「その他:カテゴリでチェック」→「クラシック」をクリックする。そうすると、やっと「ニューリリース」が現れるので、「すべて見る」をクリック。すると、ただただ何の芸もなく、新着アルバムがタイル上に並んで表示される。

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Apple Musicの「ニューリリース」には、アルバムがタイル状に並べられているだけ。知識のある人でないと敬遠してしまう

 正直いってこれでは、かなりクラシックに対する知識がある人でないと、途方に暮れるだけだ。メタルやプログレ好きな筆者の場合、仕事でクラシックを録音し、聴きはするが、正直言って専門的に聴き込んでいるわけではないのでいつも、途方に暮れている。

 一方で、Primephonicの「New Releases」は、とてもよくできている。ユーザーが指定できるフィルターが設定されており、ジャンル(オーケストラや声楽など)、時代(ルネサンスやロマン派など)、楽器でフィルタリングできる。

 この機能はとても重宝する。このようなフィルター機能を実現できるのは、キメの細かなメタデータを設定しているからだろう。また、「New Releases」の枠は、やみくもに新作品を掲載しているのではなく、ちゃんとキュレーションされているようだ。

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Primephonicの「New Releases」は、フィルター機能があるので、とても使いやすい

  ここで、急に心配になった。

 クラシック作品をいくつもApple Musicに提供している筆者だが、そういえば、ジャンルや時代といった、メタデータをこれまでApple Musicに提供した覚えはない。もし、Apple Musicが、Primephonic並の検索性を備えるのであれば、今後は、このようなメータデータも要求されて然るべきだろう。

 過去にリリース済みの作品についても、メタデータを要求されるのだろうか。だとしたら、大変な作業になりそうでちょっと気が重い。ただ、8月31日時点でアグリゲーターから特に連絡はない。

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