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テレビは“巣ごもり”時代に対応できていない 視聴データが示す生活とのズレ(3/3 ページ)

テレビ視聴者へのアンケート調査の結果から、コロナ禍での生活とのズレを感じとる。

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YouTubeに負け始めた?

 同じくインテージが東洋経済に寄稿した分析記事がある。これによれば、お昼の時間帯の平均利用率では各局ともYouTubeに負け始めており、平日のゴールデンタイムも勝てているのは日本テレビとフジテレビ系列のみとなっている。

 ゴールデンタイムとはすなわちテレビではバラエティーの時間帯である。ここでYouTubeに勝てなくなってきている理由は、2通り考えられる。

 1つは、この時間帯に求められるコンテンツは、果たしてバラエティーなのか、という問題だ。通常であれば仕事から帰ってビールでも飲みながらゆっくり過ごしている時間帯で、何も考えず笑っていられるものが求められていた時代もあった。

 しかし今は働く時間帯がバラバラになってきており、「時間帯別コンテンツ」という考え方がもう古くなってきている可能性がある。その点YouTubeは、自分から求めればどのようなタイプのコンテンツも探せる自由度があり、その自由度という点で勝てなくなってきているのではないか。

 もう1つは、同じバラエティーが求められているにしても、テレビ番組が面白くなくなってきているという問題だ。今やテレビ番組はSNSで激しくたたかれるのがニュースになったりしている時代である。コンプライアンス的にだんだんやれることの範囲が狭くなってきており、ロケもままならない状況では、トークで回すしかない。

 だがトークの面白さは、集中してちゃんと聞かないと分からない。つけっぱなしで小音量、あるいは音を消してオンにしているだけという状況では、トーク番組は弱い。昔のドリフのコントみたいに、言葉不要で絵面を見ていれば笑えるような番組は見当たらなくなっている。

 一方YouTubeには、未だ体を張った笑いというものが残っている。新作でなくても、探せば過去のものが見つかるという強みもある。

 ほとんどの人がスマートフォンで能動的に情報にアクセスすることを覚えた今となっては、一方的に送られてくるものに対して興味・関心が持てるかどうかは、だんだん怪しくなってきた。

 自分の中にまず「興味」があり、そこから探していくYouTube的なVODコンテンツに強みが出てくるのは当然の結果だが、これまでテレビ局はその事実を直視しないようにしてきた。バラエティーナンバーワンの自負もあるだろう。

 笑いの質という点では、優れた芸人がひしめくテレビにはまだ強みがある。だが芸人の中には、テレビをやめてYouTubeにシフトする人たちも出てきており、テレビOBが作る笑いもYouTubeの中に取り込まれつつある。「YouTube vs. テレビ」ではなく、YouTubeの中にどっちもあるのならば、対抗できるのは接触率だけである。

 バラエティーで勝てない局は、今この時期には思い切ってゴールデンタイムにニュースを持ってきたらどうなのかと思う。東洋経済のグラフで午後7時台にNHKが鋭く立っているのは、「NHKニュース7」があるからだ。全体的に低調なNHKの利用率の中で、この山は見逃せない。

 加えて、労働時間が自由になりつつある今、何も考えたくない時間帯はゴールデンタイムよりももっと後にシフトしているのではないだろうか。現在ニュース番組帯となっている、午後10時から12時ぐらいである。その時間にニュース番組がウケたのは、皆帰りが遅かった時代の名残りである。

 今年も9月から10月にかけて、テレビは番組改編時期となる。コロナ禍だからといって特に需要が伸びているわけでもないテレビがここで大ナタを振るえるか。今が一番、いろいろやってみても大丈夫な時期である。このチャンスを逃してしまうと、「リアルタイムで見るメディア」の立場も、ネットに食われていくことになる。

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