島村楽器が需要予測にAI活用、非エンジニアが制作 成功のカギを本人が解説:CEATEC 2021 ONLINE
これまでは商品の発注数を、経験者の勘に頼っていた島村楽器。需要予測システムを内製し、4月に運用を始めたところ、工数が半分になったという。導入の担当者は非エンジニアの社員。AI活用の経験が少ないにもかかわらず、なぜ業務効率化を実現できたのか。
全国39都道府県に約170店舗を展開する楽器小売店の島村楽器。在庫管理や、商品を物流拠点から店舗に配送するなどの業務を担当する「ロジスティクス課」では、これまで発注数などの判断を経験者の勘に頼っていた。しかし、事業の拡大につれて取り扱う商品数が増えたことを受け、外部のAPIサービスを活用して内製した需要予測システムの運用を4月に始めたところ、工数が従来の半分程度になったという。
「以前は経験と勘を頼りに発注数を決めていたが、担当者が変わると引継ぎが大変になるなど、とにかく業務に時間がかかっていた。これをなんとか削減できないかと考え、プロジェクトを開始した」
こう話すのは、需要予測システム導入の担当者である青柳瑠美さん(ロジスティクス課)。担当業務は発注や在庫管理で、これまでエンジニアとしての経験はなかったという。そんな青柳さんが、工数半減を成し遂げるシステムをどのように完成させたのか。
10月19日から22日にかけて開催しているIT総合展示会「CEATEC 2021 ONLINE」で、プロジェクトの詳細を青柳さんが解説した。
「未経験でも工数半減」カギはAWSのマネージドサービス活用
島村楽器が発注業務の改善に取り組み始めたのは2019年。当初はパッケージソフトの導入を検討していたものの、仕様が複雑だった他、自社でサーバの運用が必要になる点をクリアできず、順調に進まなかったという。
そこで代案として出てきたのが、米Amazon Web Services(AWS)が提供する、機械学習を活用した需要予測などをAPIで利用できるマネージドサービス「Amazon Forecast」だ。青柳さんによれば自社でサーバを用意する必要がなく、データさえ用意すれば非エンジニアでもすぐ機能を使える点が選定の理由だったという。
Amazon Forecastを活用したシステムの構築を視野に入れた島村楽器は、20年5月に同サービスの検証を開始。8月には実データを使ったテストも行い、精度に問題がないことを確認した。
これを受けた青柳さんは、AWSの日本法人が実施するセミナーやイベントに参加したり、同社の営業などからアドバイスを受けたりしつつ、Amazon Forecastを組み込んだ需要予測システムを構築。2月には既存システムとの連携も整え、21月4月に本番運用を開始した。
こうして完成したシステムでは、基幹システムから取り出したデータを、データベース管理ソフト「FileMaker」で自動加工。これを基にAmazon Forecastで需要予測し、その結果を再度FileMakerで自動で成形した後、基幹システムに取り込む仕組みを採用している。
新システムの導入により、工数を削減できただけでなく、需要予測の精度が上がったため、客の注文に対して品切れで対応できない商品の割合「欠品率」も、従来の2%から1.3%まで減らすことができたという。
今後は全店舗への展開も
青柳さんの尽力によって完成した需要予測システム。島村楽器では今後、このシステムをロジスティクス課だけでなく各店舗に導入することも検討中という。青柳さんは自身が手掛けたプロジェクトについてこう振り返る。
「内製の場合、立ち上げの時点では確かに技術・知識の習得など努力が必要だった。ただ、それを乗り越えると社内にノウハウができ、他のプロジェクトにも良い影響が出るなどたくさんのメリットもあった。チャレンジする価値のあるものだったと感じている」
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