その出勤、本当に必要ですか? 企業の災害対策は「事前の取り決め」から:デジタル防災を始めよう(2/2 ページ)
首都圏で相次ぐ地震、阿蘇山の噴火など、防災を意識する日々が続いている。デジタルと防災を考えるこの連載を振り返りつつ、企業の災害対策のあり方を考えてみた。
避難はしても非難してはならない
あらかじめ行動計画を策定し、運用することは、事前の準備に手間もコストがかかるうえ、対策が空振りに終わった時などは「過剰な対応でなかったのか」と批判されることもある。対策が奏功して大過なく乗り越えたとしても「そこまでする必要はあったのか?」などと言われがちだ。
しかし、問題なく動作しているからと、サーバをメンテしていた担当者を減らしたら、後に重大インシデントが発生して困った(そして担当者はすでにいない)といったよくあるIT業界悲話のように、何事もない日常を過ごせるのはそれを維持している人々がいてこそだ。万一の際にも被害が最小限で済んでいるとすれば、それは備えて対策していたからという面があるのを忘れないようにしたい。
「こんなこともあろうかと」とあらゆる事態を想定して準備するのがベストだが、マイタイムラインを設定しておくことで、そのコスパを上げられるわけだ。
デジタル対策をしておけば選択肢が増える
「マイタイムライン」を定めたり、「事前の取り決め」をしておくなどは面倒なことと思われがちだ。想定しておいてもそれ以外の事態になったらどうするのか?(意味がなくなるのでは?)と疑問を持つ人も多いかと思う。しかし、事前の準備を整えておくことで、何かあった場合に行動の選択肢を広げられるのだ。
防災のためにリモートワークの準備をしていた企業や個人は今回のコロナ禍にもすぐに対応できたはず。この状況に際してすぐに対策した場合も同様だ。スマホに防災関連のアプリを入れてる人は、いざ災害にあったときにすぐに情報を参照できる。ことが起こってからアプリをダウンロードしようとしても、回線が混んでダウンロードできないことがあるかもしれない。必要な書類をスキャンしてクラウドにアップしていた人は、自宅に取りに戻らずに、避難を優先できる。
想定した以外の事態になったとしても、その準備は無駄にならない。準備していたもので対応できる対策があるかもしれないし、まったく準備していない人よりはとれる選択肢が多いはずだ。
今後も、デジタル防災を中心に、さまざまな防災情報をお送りする予定なので、チェックして、できることから始めていってほしい。
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