匠の技をデジタルで再現する新しい「日本のものづくり」 日産の最新インテリジェント工場がすごいことになっていた(8/8 ページ)
テクノロジージャーナリスト西川善司氏が日産自動車の栃木工場が「Nissan Intelligent Factory」を取材した、渾身のレポート。
デジタル技術は「日本のものづくり」をどう変えていくのか
NIFは、工場で働く人間の工員の負担の軽減と、製造効率の向上を実現するためのプロジェクトであるが、意外や意外、人間の工員の削減自体は10%にも及んでいないのだとか。
「工場の高効率化/自動化」といえば、短絡的に「人間の働くべき場所を奪う」的なストーリーが連想されがちだが、それよりは今回のNIFプロジェクトは、各工程において「人間が行うべきか」「ロボットなどの機械が行うべきか」の最適化を進めた……という側面の方が強いようである。
ただ、日産側も、昨今の若者の職業選択志向を鑑みると「工場で働きたい」と考える若者は減少傾向にあると分析しており、そうした製造工場の高効率化/自動化は今後、力を入れて取り組む課題として認識しているという話だ。
また、日産では、そうした「工場での新しい人間の働き手」の獲得が今後難しくなっていくであろうという見通しから、「人間の匠のワザ」がますます失われていく可能性が高いことを危惧しているという。そこで、その「人間の匠のワザ」の継承・保存を、デジタルやITの技術、そして人工知能の力でなんとかできないか、と研究と開発を進めているそうだ。
今回のNIF見学では、その新システムの性能に感心させられただけでなく、今後の「日本のものづくり」の在り方についても、思慮を巡らせる大きな機会となった。
繰り返しになるが、このNIFの成果物の第1号は日産の新電気自動車「アリア」になる。アリアは現在、予約受注を開始中だ。年内にはアリアの実車が各販売店で展示されるようになるはずなので、NIFそのものはもちろん、日産のものづくりの姿勢に興味を持った人は、最寄りの日産販売店まで足を運んでみてはどうだろうか。
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