VR空間でガチに原稿を書いたらその実用度に驚いた 「バーチャルで仕事」のメリットと課題(4/4 ページ)
リアルと同程度の速度で原稿が書けてしまう、そういうところまでVR HMDは来ている。
もっと自由度が高い「Immersed」
と、このように、MacBook Pro+Oculus Quest 2+Horizon Workroomsでの「VR仕事環境」はかなりの完成度なのだが、不満点もある。
せっかくの仮想空間なのに、画面サイズが2段階固定で、出せる画面数も「1つ」に限定されているからだ。慣れてくるとぜいたくなもので、マルチディスプレイかつもっと自由な位置に配置したい……と考えるのも必然だ。
でも、Horizon Workroomsと同様、「キーボードが快適にタイプできる」機能は必須。Quest 2の下の隙間からキーをチラ見して打つのでは使いづらすぎる。
そういう環境はないものか……といえば、ある。それが「Immersed」というアプリだ。
基本的な機能の利用は無料だが、3つ以上のバーチャルモニターサポートや、チームベースでのコラボレーション機能などの付加機能を使う場合には有料のサブスクリプション制になる、という形である。今回は2つまでの画面で我慢しておくことにして、無料版を利用する。
こちらも、PC/Macに専用アプリを入れ、それで画像出力をVR空間内に表示する形式だ。M1版Macももちろん対応している。両者の接続もワイヤレスでよく、特別な設定もなくすんなりつながった。
こちらでの動作画面が以下のような感じになる。画面サイズは自由に変えられるし、バーチャルな「2画面目」を追加することもできる。画質・動作ともに問題なく、実に快適に作業できた。2画面目の解像度・サイズも自由なので、Webを表示する方は縦長にしてスクロールの回数を減らす……なんてこともできるわけだ。これはなかなかいい。
こちらも「PCに付けられたキーボードをVR内に持ち込んで快適に作業する」機能を持っているのだが、Oculus純正のHorizon Workroomsとは考え方が異なる。
Horizon Workroomsと違い、物理キーボードやMacの位置を認識して表示することはない。しかし、腕を認識し、自分のキータイプとソフト上のキータイプ表示を「キャリブレーション」することで、画面上のソフトウェアキーボードの「タイプした」という表示と実際の動作を「合わせる」ことができるのだ。
タイプ中に実際の空間やPCのキーボードは見えていないのだが、意外なほど違和感なくタイプできる。これはそれなりにタッチタイピングができているから、という事情はあるのだろうが、ソフトウェアキーボードで「今どこをタイプしたのか」が見えるため、意識的な位置合わせがしやすいためだろう。キャリブレーションも「PとQとBを長押しする」というとてもシンプルなもの。PCの種類やOSを問わない、という意味でも、とても良くできている。
自室がそのまま会議室にもなる
Horizon WorkroomsとImmersed、どちらがいいかはちょっと判断に困る。機能としてはImmersedの方が良いし、環境も選ばず使いやすい。一方、MacBook Proとの相性でいえば、Horizon Workroomsも悪くない。会議環境としての未来感もある。
どちらにしろ、実用性は意外なほど高い。どちらもコミュニケーション機能を重視していて、外部からビデオで参加してもらいつつ自分はVRのアバターで会議をする……といった感じだ。自分一人の作業部屋が必要に応じて会議室にもなる、といえば分かりやすいだろうか。
冒頭で述べたように、この種のソリューションは、まじめに「ヘッドセットの重さと快適さの維持」が最大の課題だ。ここは現状いかんともしがたく、それゆえに「常にこれで仕事をする」には至らない。だが逆にいえば、デバイスの進化さえ待てば十分に「アリ」な世界なのである。
関連記事
- 「メタバース=スノウ・クラッシュ」で本当にいいの? メタバースはコンピュータの歴史そのものだ
メタバースとは何か。西田宗千佳さんが改めてその定義を考えてみた。 - 「メタバース×ブロックチェーン」の未来(前編) Thirdverseの國光CEOと話す、VRのその先
西田宗千佳さんによる、Thirdverseの代表取締役CEOへのインタビュー前編。VRの世界の重要な概念であるメタバースの未来を議論する。 - 「メタバース×ブロックチェーン」の未来(後編) Thirdverseの國光CEOと話す、VRのその先
インタビュー後編はメタバースとブロックチェーンを組み合わせた時に生まれる可能性について。 - BALMUDA Phoneには何が欠けているのか 「デザイン」と「新規参入」のジレンマ
テクノロジージャーナリストの西田宗千佳さんが、バルミューダ初のスマートフォンが抱える問題点を分析した。 - 「ちょい曲げ」「くの字」スマホの使い心地 自腹で買った「Galaxy Z Fold 3 5G」でいろいろ考えた
西田宗千佳さんが自腹購入した「大きな画面の2つ折りスマホ」、1カ月が経過してのレビュー。 - 「仮想現実で生きる人が増えていく」――アドビCPOが語る、テクノロジー市場の未来予想
2021年10月27日、28日に開催した「Adobe Max 2021」。これに合わせて、同社のCPO(最高製品責任者)であるスコット・ベルスキー氏がテクノロジーとビジョンに関するインタビューに答えた。キーワードは「クラウド化」と「3D」だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.