「iモード」とは何だったのか その本質と功績、iPhoneに駆逐された理由(3/3 ページ)
「3Gでやるならこのくらいが限界」「次の大きなジャンプは4Gが出てから」と考える人は多かった。iPhoneが出てくるまでは。
忖度しない「iPhone」の衝撃
Appleが作ったiPhoneは、想定以上に「携帯電話事業者の通信事情に忖度しない」機器だった。携帯電話向けサービスの方を向かず、PCのインターネットを掌の中で使いやすくする方を見ていた。
実際、構造的にPC(Mac)に近いiPhoneは、フィーチャーフォンよりもずっと多くのデータ通信を必要とした。iPhone利用者が増えることは回線の負担が高まることを意味しており、携帯電話事業者としてはあまり歓迎していなかったところがある。携帯電話事業者から見れば、iPhoneのようなスマートフォンは「いつかメジャーになるが、3Gのうちにはまだ早い」存在だったわけだ。
日本の場合、契約者数を伸ばしたいソフトバンクがAppleと手を結んだことが、iPhoneの普及を後押しする結果になった。その背景には、ソフトバンクの携帯電話向けコンテンツサービスが貧弱で、同時に独自性の高い端末も弱かった、という事情もある。
利用者の意識は少しずつ変わっていき、制限のある携帯電話専用プラットフォームの上から、より通常のインターネットに近く、アプリという新しいエコシステムのある「スマートフォン上の環境」に移行するのはある種必然であった、ともいえる。
iPhoneをはじめとしたスマートフォンは、過去のフィーチャーフォンほどには携帯電話事業者の差を考える必要はない。同じ設計から各地域向けに製品を作るのは難しくない。競争力のある製品を世界に向けて多数生産して販売する、というビジネスモデルが本当の意味で成立するのはスマートフォン以降である。日本の携帯電話メーカーは、ここでビジネスモデルのトランジションが遅れて弱くなっていく。
iモードという存在は、「携帯電話回線」という制限から生まれたものだ。それがスマートフォンの時代になり、制約条件が変わると存在価値を失うのは必然といえる。iモードが終わる、という話や、3Gが停波していくという話の本質はここにある。
スマホの定着によって、携帯電話事業者側での回線マネジメントの考え方も変わった。端末の販売や調達のあり方も変わり、世界中で同じ端末が使われる例が増えていった。
一方で、なくなる必然性があるのは「通信量制約をベースとしたiモードに代表される、古い通信サービス」である。本来、端末形状はあまり関係ない。例えば、通話専用に近い端末はいまでも(少ないながら)ニーズがあるだろうし、それを2つ折りで作ってもいい。そういう製品も実際にある。
ただ、スマートフォン以降、人々の「ケータイ」の使い方が「スマホ」に変わってしまったこともあり、道具として「過去のケータイ」に近い使い方が顧みられなくなっている部分はあるだろう。それもまた1つの変化ではある。
5Gがスタートしているが、現状、われわれの生活にあまり変化はない。その理由は、回線事情の変化が「スマホ」という端末やその上のサービスに大きく影響していないからでもある。5Gがわれわれの生活に大きく影響するとすれば、それは「4G回線の事情を忖度せず、5Gがないと本質が出てこない」ような機器が登場するときなのかもしれない。
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