接種証明書アプリ、「よくできた」からこそ見えてきた「本当の課題」(3/4 ページ)
新型コロナワクチン接種証明書アプリがリリースされ、アプリ自体は評判が良い。しかし、そこにはまだやるべきことが残っている。西田宗千佳さんが指摘する課題とは……。
「どう使うか」は未定、そして紙の証明書は今後も有効
ただ、ここで確認しておきたいことも1つある。
接種証明アプリではQRコードが表示されているが、現状、「このQRコードを読み込むことが接種証明、というわけではない」という点だ。QRコードはあくまで証明書の偽造防止策である。アプリ内に「二次元コードを読み取る」という機能が用意されており、この機能を使って、それが有効な発行済みの接種証明書なのかどうかを確認できる。
ただ、この機能を民間などで「どう使うのか」は規定されていない。というよりも、接種証明書を国内の店舗やイベントなど、どういうシーンでどう使うのか、という、明確な指針も運用ルールも示されてはいないのだ。あくまで利用はそれぞれに委ねられている。
そもそも今回の場合、まずは海外渡航でのニーズがあり、そこから同時に国内向けにも整備してしまおう、という狙いがあったのは間違いない。
使っているQRコードは国際規格に則ったもので、日本向け・海外向け共通では「SMART Health Card(SHC)」が、海外向けではさらに「ICAO VDS-NC(Visible Digital Seal - Non-Constrained Environments)」を併用する形になっている。海外向けが2つ併記になっているのは実情を反映した良い実装だと思う。
同時にここで確認しておきたいのは、紙の接種証明書は今も、そして今後も有効であるということだ。
接種証明が全てアプリによるデジタル形式に置き換えられるわけではない。目的は発行の迅速化を中心とした利便性向上だ。そのため、紙の接種証明書の表記もこのタイミングで変更になり、QRコードが併記されることになった。さらに、海外渡航用に加え、日本国内向けの「紙の接種証明書」の発行も始まっている。
これらは基本、目視での確認であり、さらに偽造防止のためにQRコードを使う、という形になっている。
iPhoneにおいては、アプリで発行したQRコードからウォレットに証明書を登録することも可能になっている。だが、こうした位置付けを考えると、「確かにQRコードは表示できるが、運用の場で接種証明書としてスムーズに理解されるかどうか」はまた別の話、ということになる。正当に発行されたものなのでQRコード自体に問題はないが、目視確認の場合には、アプリ側で示した方が安全ではある。
前述のように、現状、接種証明書を感染防止の仕組みとしてどう使うのか、海外渡航用には運用ルールがあるものの、国内での利用については、明確なルールがない。デジタル庁としてはアプリのリリースまでが仕事であり、店舗やイベントなどでどう使うのか、というルールはないし、内閣府としても積極的に推進する状況にはない。
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