ドローン4機と車両ロボ1機を従えてパトロール 人間とロボットの混合チームで探査できるシステム:Innovative Tech
フランスのINRIAとイタリアのUniversity of Salernoによる研究チームは、人間とロボットの異種混合チームのための分散型における接続維持および探索フレームワークを開発。任意の数のドローンと地上を移動する車両ロボット、人間を含む共同チームを同時進行で管理する。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
フランスのINRIA(Institut National de Recherche en Informatique et en Automatique)とイタリアのUniversity of Salernoによる研究チームが開発した「Decentralized Control of a Heterogeneous Human-Robot Team for Exploration and Patrolling」は、人間とロボットの異種混合チームのための分散型における接続維持および探索フレームワークだ。このフレームワークは、任意の数のドローンと地上を移動する車両ロボット、人間を含む共同チームを同時進行で管理する。
ロボットを使って救出や探査、パトロール、監視などを行うミッションは多数研究されているが、自律型か遠隔操作によるものが多い。この研究では、ロボットと人間の両方で構成する混合チームを制御するためのアルゴリズムを設計し、ロボットと人間の共同チームでより効率的で効果的な探査を目指す。
通常はロボットだけが探査するルートを、人間がオペレーターとなり、複数のロボットを率いて同じ環境を移動する。その際、人は音声および触角によるフィードバックを介してチームの接続性に関する情報(ロボットの位置方向など)を受け取り、ロボットはチームの接続を維持するために、また特定のターゲットを探査するために自律的に移動する。
アルゴリズムは、ドローンと人間の互いの相対的な位置関係のみを使用し、全ての計算は分散型で設計する。そのため、絶対測位システム(GPSなど)や中央のコマンドセンターに頼る必要がないのが特徴だ。
実験では、16人の被験者を対象に、人間1人に対して最大で地上移動ロボット1台、ドローン4台のエージェントからなる共同チームを組んでシミュレーションと実地テストを行った。実地テストでは、人間1人に対してドローン2台、地上移動ロボット1台のチーム編成で、光学式トラッキングシステムで追跡した室内を移動しターゲットを探索するミッションを行った。
その結果、人の動きを追跡するように動くロボットが全てのターゲットにたどり着き発見することに成功、探査の有効性を示した。被験者の数人は、音声が頻繁に与えられると気が散り混乱したと回答したことから、音声よりも触覚フィードバックが好まれると分かった。
今後は、実験評価を拡張し、動的なターゲットや障害物の存在やエージェントの位置情報の誤差、通信時のノイズ、オンボードセンサーの使用、ロボットを探査だけでなく例えば1台を物販の運搬用に使う、複数の人間を含むチーム編成など、実世界の状況に近いシナリオを実施したいという。
Source and Image Credits: M. Aggravi, G. Sirignano, P. R. Giordano and C. Pacchierotti, "Decentralized Control of a Heterogeneous Human-Robot Team for Exploration and Patrolling," in IEEE Transactions on Automation Science and Engineering, doi: 10.1109/TASE.2021.3106386.
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