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ソニーEV参入から考えた「10年先のEV」(4/4 ページ)

ソニーのEV担当者らを取材した西田宗千佳さんは、さらにその先を予想する。

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「空間」としての自動車が生まれていく

 こうした構想が現実のものとなると、運転に使っていた時間が別のことに使える時代が来る。

 だが、より重要なのは、「自動車を所有しているのに、10%以下の時間だけが使われている」状況を見直す機運がさらに高まるだろう、という点だ。

 先ほど、その一環として「カーシェアや乗り合い」を挙げた。だが現実問題として、カーシェアが必要な時間はたいてい同じであり、自動車が空いている時間だけ貸し出すのはなかなか難しい。いつでも快適に借りられる体制を作るには、「自動車が余る」状況にするしかない。

 だとすると、乗り合い前提のサービスはありうるが、「自分が使っていない時間、自動車を貸し出す」のはうまくいかない可能性がある、ということだ。

 そんな状況を考えると、自宅に自動車を所有したい、と思う人は劇的に減らない可能性がある。

 だとするとどうなるか?

 EVの価値を上げる、ということが解決策になる。

 EVを家庭の補助電源とする、という方法論はその典型だろう。今のEVもそこが重要であったりする。

 ではこの先、自動運転が普通のものになったら?

 自動車の中はもっと広くなるかもしれない。今までの自動車と同じ操作系である必要はなくなるからだ。そうすると、家の外に「良い閉鎖空間」が生み出される可能性もある。要はEVが「はなれ」になるわけだ。ひょっとすると、スピーカーやディスプレイの配置を改善することで、コンパクトなAVシアターを作れるかもしれない。

 そうした世界になれば、これはソニーの得意とするところだろう。

 もちろん「走る」ことの快適さもポイントだ。自動運転で交通機関としての自動車が増えると、逆に、自宅に持っていたいのは「走ることが楽しい車」になるかもしれない。

 ソニーはそうした部分で差別化できる。長期的にいえば、そんなところを目指しているのではないか。

 どちらにしろ、その姿が見えるのは、自動車の姿が変わり、それぞれの用途に合わせて違う価値のEVが生まれるようになった時だろう。まだ最低5年以上先の話だと思うし、自動車産業の裾野の広さを思えば、10年かかっても無理かもしれない。

 EV+自動運転を考えるときには、そのくらいの未来に破壊的な変化が待っている、という意識でいる必要があるのだろう。

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