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大根おろしに起きたパラダイムシフト 燕三条の金属加工メーカーが取り組んだ9900円の名品「17°」分かりにくいけれど面白いモノたち(4/5 ページ)

新潟県燕市の刃物製造販売メーカー、シゲル工業の大根おろしは、「究極のフワフワ感」と「ツユが出にくい」「洗いやすい」を目指したものだ。

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力がいらず、洗いやすい

 そして、刃の切れ味が良いので力がいらない。片方向だけで引く動きに力がいらないのも、結果的に楽で早い。そして、おろされた大根は、本当にふんわりとしていて、ツユが出ていない。実は私は大根おろしのツユがあまり得意でないため、この仕上がりは、本当にありがたい。辛味が少なく、しっかりと大根の風味が生きているせいか、あきらかに普段よりおいしく感じるし、てんぷらのツユに入れた時の風味の良さは、ちょっとすごい。

 そして、何より洗いやすい。刃が立っている方向を向けて水を流すだけで、刃に付いた大根は簡単に洗い流せる。これは片側にだけ刃が向いている構造の、もっとも分かりやすいメリットだ。メインテナンスのしやすさというのは、道具にとって何より大事なことだと思っている。

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足に付いている滑り止めのシリコンゴムは、中央が凹(へこ)んだ吸盤のような仕様で、しっかりと本体を固定する。取り換えができる構造になっている点にも注目

 「ノウハウの塊なんですよ」と、この製品のデザインを担当したプロダクトデザイナーの秋田道夫氏は言う。「だから、デザイナーがすることなんか、ほとんど無いんです」と笑う。「例えば、この足に付いている滑り止めを見てください。これ、よくあるシリコンの滑り止めかと思ったら、中央が少し凹んでるんです。これが吸盤のような役割になって、より安定して大根をおろせるんですよ」と秋田氏。しかも、この滑り止め、接着剤で貼り付けてあるのではなく、足に開けられた穴にはめ込まれている。

 「ほとんど、経年変化を気にしないで使える構造になっているんですけど、こういうパーツはやっぱり破損する場合があるので、交換できるようにしています」と、シゲル工業代表取締役の藤田正健氏。それを聞いた秋田氏は「ね、デザイナーがやること無いでしょ」と笑う。

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秋田道夫氏による、初期のデザイン案と、その後のデザインスケッチ。V字の刃の配置、角度を付けたおろし金といったアイデアを形にしていく過程が伺える

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