「ボカロPの一般認知が広がってきた」 VOCALOID声優オーディション開催の背景
ヤマハが「VOCALOID」音源の声優オーディションを開催する。同社がVOCALOIDで再度動きを加速させているのは「YOASOBIさんの紅白歌合戦出場で『ボカロP』という存在の一般認知が広がったから」だという。
ヤマハが2月15日に、歌声合成ソフト「VOCALOID」音源の声優オーディションを開催すると発表した。一般にリリースする予定のオリジナルVOCALOID音源を同社が制作するのは4年ぶりだが、ここへ来て取り組みを加速させているのは「YOASOBIさんの紅白歌合戦出場で『ボカロP』という存在の一般認知が広がったから」(同社)だという。
オーディションでは、音楽共有サイト「nana」に投稿された“歌ってみた”音声の中から最も優秀な「グランプリ」を選出。グランプリに選ばれた人の歌声を基にヤマハがVOCALOID音源を制作し、リリースする。
VOCALOIDはヤマハが2003年に発表した歌声合成ソフト。クリプトン・フューチャー・メディア(札幌)製のVOCALOID音源「初音ミク」が流行して以降、各社から年間平均で8本程度のVOCALOID音源が発売されてきた。ヤマハも10年から自社開発のオリジナル音源をリリースしている。
しかし、19年以降は音源発売ペースが急激に落ち、20年と21年には0本にまでなった。そんなヤマハが声優オーディションを始めると発表し、Twitterでは「近いうちに次世代版VOCALOIDが出るという伏線か?」「なぜ今更?」といった反応が挙がっている。
ITmedia NEWSがヤマハにオーディション開催の背景を尋ねたところ、以下のような回答があった。
「20年の紅白歌合戦にYOASOBIさんが出演したことで、テレビなどでボカロPの露出が増えました。メディアでも取り上げられるようになり、ヤマハにも問い合わせが増えています。VOCALOID関連のイベントもコロナ禍でありながら盛り上がりを見せている今、なんとしても認知度を上げたいという思いです」(ヤマハ)
「YOASOBI」は、VOCALOID音源を使って音楽を作る“ボカロP”でもある「Ayase」さんが作曲家として参加する音楽ユニット。21年の紅白歌合戦では、歌い手の「まふまふ」さんがボカロP「カンザキイオリ」さんの楽曲を歌うなど、ボカロPの進出が目立っている。
これらの流れを受け、ヤマハは1月にVOCALOIDを1カ月間無料で試せる無料体験版を公開。VOCALOIDブランドの認知向上に乗り出している。
今回のオーディションで選ばれた声優による音源制作は「少し先になる」(ヤマハ)という。リリース時期や提供方法も未定。現行バージョンの「VOCALOID5」用の音源にするか、次世代版VOCALOID用の音源にするかは決まっておらず、「そのときに最適なソフトとしてリリースする」(ヤマハ)としている。
ヤマハは現在「キャラクター感を演出するというより、いかに人間らしい歌声を作るかという研究開発をしている」(同社)という。19年以降に音源発売ペースが落ちているのも「それが一つの理由」としている。19年には“AI美空ひばり”を発表するなどAIの活用も進めており、着実に技術の進歩を重ねている状況だ。
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