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猫の横で毎晩一緒に寝たらどのような影響が出る? 法政大学が検証Innovative Tech

法政大学の研究チームは、寝床がいつも変わる猫の横で寝る睡眠手法を検証した論文を発表した。猫の横に寝袋を敷き24日間一緒に寝た際に、身体的・心理的にどう影響するかを従来のベッドや布団で寝る睡眠スタイルと比較し考察した。

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Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 法政大学の研究チームが発表した「猫と共に探求する新たな睡眠価値の創出」は、寝床がいつも変わる猫の横で寝る睡眠手法を検証した論文だ。猫の横に寝袋を敷き24日間一緒に寝た際に、身体的・心理的にどう影響するかを従来のベッドや布団で寝る睡眠スタイルと比較し考察した。


猫が寝る横に寝袋をセットした様子

 猫の睡眠場所は、お気に入りの場所がある程度決まっているが、複数の要因(触感、温度、灯、賑わい、狭さ、気分など)でさまざまな場所を都度選択する。この予想できない多様性を利用して、被験者の飼い猫5匹と24日間一緒に寝る実験を行った。5匹のうち、毎晩1匹を任意に選択し、その猫のすぐ隣に寝袋を敷いて寝床とする。

 睡眠中はFitbitを装着し、睡眠時間、目覚めた時間や回数、浅い/深い睡眠時間などからなる睡眠スコアを収集する。収集データを基に身体的影響を分析することで、 ベッドで寝る通常の睡眠と、猫の隣で寝る睡眠を比較し評価する。心理的影響を分析するために、被験者の睡眠体験や感想を日記として記録し、その際の猫の様子や変化も同時に記録する。

 実験中の寝床は、テレビの前やテーブルの下、ソファの脇や上、階段、踊り場、ベッドの上、ベッドとベッドの間と多岐にわたった。


猫はさまざまな場所を都度選んで寝床にする

 結果は、睡眠スコアの平均を比べると、ベッドでの睡眠の場合(平均は84.2、分散は22.7)と猫と一緒に睡眠を取った場合(平均は83.7、分散は36.1)とで有意な差は認められなかった。

 一方で、心理的影響は大きく違った。記録した日記には、予測できない猫の行動から、先の読めない冒険的なワクワク感に関することや、新たな発見が多く記されていた。猫が好む狭くて静かな場所は人も心地よく感じること、通常寝転ばない場所から見る部屋の景色が新鮮だったことなどだ。

 また猫と一緒に寝ると、就寝前の触れ合いが自然発生しリラックス効果につながった。睡眠中にちょっかいや毛繕いなどをされる頻度が増え、何度も起こされたが、睡眠の邪魔として感じるのではなく、幸福感が高まる体験となった。

 実験を通して、猫の様子も変化した。隣で寝ている人間に対し、以前より昼夜問わずに毛繕いのような愛着行為を示す頻度が増加したこと、実験時に使用していた寝袋に対しても昼間に使いたがる傾向が見られたことが観察できた。

 以上のような結果は、猫が被験者に慣れている前提で行われた実験だが、通常のベッドでの睡眠時と比較しても身体的な睡眠の質に数値的な変化はほとんど見られず、その一方で猫との交流が増える効果で心理的な幸福感の向上を示唆した。猫自身にも飼い主との愛着に影響を与える可能性があるという。


階段で猫と一緒に寝たときの日記

動画はこちら

出典および画像クレジット: 中橋 侑里,SEONG YOUNG AH. “猫と共に探求する新たな睡眠価値の創出” 情報処理学会 インタラクション2022.



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