謝罪の秘訣は台数? 台数が増えることでロボットの謝罪の効果は高まるのか:Innovative Tech
ATR(国際電気通信基礎技術研究所)などの研究チームは、サービス中に失敗した人型ロボットが謝る際に、1台よりも2台の方が謝罪の効果が高くなることを実証した論文を発表した。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
ATR(国際電気通信基礎技術研究所)、同志社大学、慶應義塾大学、国立研究開発法人化学技術振興機構(さきがけ)による研究チームが発表した論文「ロボットの台数が増えることで謝罪の効果は高まるか?」は、サービス中に失敗した人型ロボットが謝る際に、1台よりも2台の方が謝罪の効果が高くなることを実証した報告書だ。
昨今、人型ロボットがサービスを行い活躍するケースが多くなってきた一方で、失敗も課題となっている。この課題に対し、失敗した後の謝罪を1台のロボットではなく複数台のロボットだとどうなるかを検証した。
検証するため、複数台の人型配膳ロボットが働くレストランを想定し、配膳中に手に持っている商品(実験時はソフトクリーム)をトレーごと落とす失敗シーンを設定した。その際、ロボット1台での謝罪と2台同時の謝罪を比較する。配膳を行うロボットには、Softbank Robotics社製のPepperを用いた。
具体的には、1台のロボットがお客さんの前で商品が乗るトレーを落とし、「大変申し訳ございません」の音声とお辞儀、続けて「新しいものをすぐにお持ちします。本日のお代は結構ですので」という音声とお辞儀で謝罪を行う。2台の場合は、もう1台が駆け付け、1台目の音声とお辞儀に続くように2台目がお辞儀して謝罪を行う。
この様子をビデオに撮影し、被験者168人に視聴して評価してもらった。視聴後に「自分に給仕をしたロボットを許すことができたか」を7段階で、「何台で謝罪をするのが好ましいと思ったか」を評価してもらうアンケートを実施した。
その結果、2台の方が1台より有意に許すことができた。また、謝罪に適した台数は2台の方が1台よりも有意に多かった。この結果から、人型ロボットが失敗した際は、1台よりも複数の方が失敗に対して寛容になりやすく、複数での謝罪が好ましいことを示唆した。
将来、複数のロボットが活躍するレストランでは、失敗したロボットをサポートするために手の空いたロボットが一緒に謝りに来る未来がやってくるかもしれない。
出典および画像クレジット: 岡田優花, 木本充彦,飯尾尊優,下原勝憲,塩見昌裕. “ロボットの台数が増えることで謝罪の効果は高まるか?” 情報処理学会 インタラクション2022.
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