現状から予測する「ソニー×ホンダのEV」 なぜ両社はタッグを組んだのか(3/3 ページ)
ソニーとホンダがEVで手を組んだ。一体どういった車両を世に出してくるのか、両社が提携するに至った背景も含めて紐解いてみる。
現状から予測する「ソニーとホンダのEV」とは
では、ソニーとホンダのEVはどんな車になるのか?
冒頭でも述べたように、今ソニーが公開している「VISION-S」は試作車であり、ソニーの広報も、VISION-S開発に関わる人々も「市販車は違うものになる」と断言している。
とはいえ、いくつかの特徴は、VISION-Sから進化した形で引き継ぐのだろう。
1つ目は「ソニー製のセンサーを活用する」こと。これは、ソニーとしての目標でもあるし当然だろう。ソニーは、センサーによって周囲の情報をリアルタイムに集め、安全性に生かす「セキュリティ・コクーン」という要素をVISION-Sに搭載している。同じようなことは他の自動車会社もやっているが、当然、自社製センサーである強みを生かし、大きく差別化した要素を狙ってくるはずだ。
VISION-Sでも、車の外側だけでなく、車内にToFセンサー(物体との距離を測るセンサー)を搭載、ドライバーに最適なシート位置決定や居眠り運転防止、ジェスチャーによる操作などに使っていた。
2つ目は、「表示・操作系がディスプレイ中心になること」。1つ目にも関わるが、センサーを多用するということは、それを反映するインタフェース側も、より多彩な情報が表示できて、自由度の高いものでなくてはならない、ということになる。VISION-Sは自動車の走行系とUI系を切り分け、速度メーターを含めた高信頼性が必須の部分にはQNX、ナビやエンタメなどにはAndroidと、2つのOSを使って機能実装を行なっている。車内でのエンターテインメントを拡充するにも、そうした切り分けとソフト実装が重要になるだろう。
3つ目は「パーソナライズ」。
会見にてソニー・吉田社長は次のように述べている。
「今までのサービスは『車』を認証してきました。しかし、今後は(車を使う)『人』を認証することになり、さらに、アクションやサービスを提供していくことになります。その中で、アップデートや、必要であれば『課金』も行います」(ソニー・吉田社長)
これはすなわち、乗る人によって位置付けが変わる自動車を目指す、ということである。
VISION-Sでも、乗る人によってハンドリングやブレーキのフィーリング、運転アシストの度合いなどを変える試みがなされていたと聞いている。中で使うUIやエンターテイメント系サービスの切り替えが容易なのは言うまでもない。
さらに、カーシェアやサブスクリプション形式での提供、保険との連携を考えると、「乗る人・運転する人を認識する車」という要素には、色々と発展の可能性がある。
自動車としての形や性能もさることながら、そうした「ソフトとサービス」面での変化・進化が、ソニーとホンダが目指したい「新しいEV」だろう。
ソニーはそうした基盤となる「モビリティ・プラットフォーム」について、今春にも新会社を立ち上げる。2022年1月、EVの参入検討を表明した時に名前が出た新会社「ソニーモビリティ」とは、その部分を担当する会社なのだという。
どちらにしろ、今の時点では詳細はわからない。その「まだわからない」可能性を、ホンダは信じたのではないだろうか、と思える。
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