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味をデジタル化する「電気味覚」の可能性(前編) 「味をSNSへ投稿する」を実現するための研究Innovative Tech(2/4 ページ)

味をデジタル化を実現するために、世界中の研究室で研究が進んでおり、その基盤になるのが味のデジタル化において重要な要素である「電気味覚」という現象だ。一体どのような現象なのか。解説する。

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電気味覚が発生する要因

 2010年以降、電気味覚が工学的アプローチに活用されてきたが、ここでなぜ電気味覚が発生するのかを解明していく。ただし、どの研究も同じ原理で電気味覚が発生しているのではないことを留意した上で進めたい。今回は、諸説ある中で仮説の1つだった、イオンの電気泳動によって電気味覚が発生する現象に注目する。

 イオン電気泳動仮説は、2017年に明治大学と大阪大学、情報通信研究機構(NICT)による研究チームが発表した「Galvanic Tongue Stimulation Inhibits Five Basic Tastes Induced by Aqueous Electrolyte Solutions」にて検証され証明された。

 この論文は、電気刺激によって口の中の味覚イオンが移動し(イオン電気泳動)、舌の味蕾から離脱することで味の認識が阻害される現象を明らかにした内容になる。要するに、電気刺激で味が付加されるのではなく、味の一部が除去され味覚が変わったと認識していたわけだ。


イオン電気泳動のイメージ図

 さらに研究チームは、この現象が電圧の強さによって変化する現象も実験で明らかにした。実験は、ストローに陰極、首の後ろに陽極を取り付けて電気を流しながら、NaCl(塩味)、グリシン(甘味)、MgCl2(苦味)、クエン酸(酸味)、グルタミン酸ナトリウム(うまみ)の水溶液を摂取するというもの。

 この実験により、電圧制御と電解質を使って基本五味の強さをコントロールできると分かり、これまで困難であった電気味覚による基本五味の制御を理論的に実証した。

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