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「PCはネットワーク接続できて当然」になったのはいつから?“PC”あるいは“Personal Computer”と呼ばれるもの、その変遷を辿る(2/4 ページ)

PCをネットにつなげる試みは意外と早くスタートしていたが、日本ではほとんど知られていない。その理由は……。

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ネットワークニーズを理解していたMicrosoft

 こうしたニーズそのものは、実はMicrosoftは敏感に理解していた。Microsoftは1984年にMS-NET(Microsoft Network) Server 1.0をリリース、翌1985年にはMS-DOS 3.1をリリースしている。

 このMS-DOS 3.1、日本向け(というかPC-9800シリーズ向け)からは機能が落とされていたのだが、実はネットワーク用の拡張が含まれていた。ラフにいえばsession.exeとredir.exeという2つの常駐コマンドが追加されており、session.exeはあるサーバへの接続を維持する機能が、redir.exeはローカルのディスクとリモートのサーバを切り分ける機能を持っていた。

 例えばType C:\ほにゃらら\にゃーにゃー\....というコマンドを打つと、ファイル名の先頭がC:\で始まるからローカルのディスクだし、Type \\ほげほげ\ほにゃらら\にゃーにゃー\...だと、\\ほげほげというリモートのサーバと判断する訳だが、この切り分けをするのがredir.exe。

 で、リモートの場合はそのサーバ指定をsession.exeが受け取って、ネットワーク経由のアクセスにする、という仕組みだ。もっともこの仕組みそのものはその後も使われたのだが、肝心のMS-NET Serverの方はさっぱり普及しなかった。ちなみにMS-NET Serverはファイル共有とプリンタ共有の機能が提供されていた。

 この仕組みをそのまま利用したのが、新興メーカーである。

 この時期、多くのメーカーがこの仕組みを使ったPCのNetworkソリューションを投入している。問題はアダプターであるが、3comの3c501は1985年に投入されているし、その前世代製品の3c500は1983年にIBM Ethernet AdapterとしてOEMで提供されている。NovellのNE1000は1987年に発表され、後継のNE2000は1988年に発表された。

 1980年台から1990年前半までは、このNE2000とその互換製品がPC向けのNetworkカードの主流となった。NE1000/2000はNovellのNetWare向け製品で、このNetWareもVersion 2からMS-NET互換、つまりredir.exeを生かす形でMS-DOSをスムーズにNetWare Clientとして利用できるようにする仕組みが提供されたことで、急速にNetWareが普及するようになった。

 もっとも、こうしたNetworkを標準で搭載するという意味では、微妙にAppleの方が早かったように思う。

 もともとAppleは1983年のLisaにAppleNetと呼ばれるNetwork Protocolと独自の同軸ケーブルベースのEthernetの類似品(厳密にはEthernetとちょっと異なる)をサポートした拡張カードをオプションで提供。これがMacintoshの登場に合わせて1985年にはAppleTalkになる。

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Lisaの背面

 このAppleTalk、物理層はシリアルポート(RS-422を利用した230Kbps通信)で実現していた。これがLocalTalkと呼ばれるもので、速度を落とした代わりにポートそのものはMacintoshで標準的に搭載されており(注2)、あとはLocalTalk Adapterと呼ばれるアタッチメントを購入するだけで簡単にネットワークを構成できたことを考えると、PCの方が少しネットワーク対応は遅れていたといえる。

※注2:一般にLocalTalkという場合、8pinのDINコネクターで接続されるタイプである。ただ初期のMacintosh(Macintosh 128Kとか512Kとか)はそもそもこのDINコネクターが搭載されておらず、9pinのRS-422ポートだったので、そこからLocalTalkが利用できたかどうか、筆者には知見がない。SE/30には存在しており、実際に筆者も利用していたから、以降はLocalTalkが使えたのは間違いないのだが、この辺りは編集担当の松尾氏が何か補足して下さるだろう

※補足:Macintosh 512KではLocalTalkをサポートしていたとWikipediaに記述がある(松尾)

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SE/30の背面。右端のイヤフォンジャックの左にある2つがRS-422ポート

 ちなみにEthernetカードが高い上に、同軸ケーブル(10BASE2)も高いし、10BASE-Tはまだ登場したばかりでHubも高価だったということもあり、もっとお手軽にNetworkをということで米国で普及したのが、Artisoftが開発したLANtasticである。これはシリアルケーブル(のちに電話線)を利用してPC同士(やプリンタ)を接続するというもので、速度こそ遅いものの安価だったこと、それとメモリ利用量が少ない(サーバ側40KB/クライアント12KB)ことも受けて結構売れた記憶がある。

 ただ日本語環境に未対応(そもそも日本語版は存在しなかった)なため、日本ではほとんど話題にならなかったと記憶している。この手のネットワークは他にもいくつか存在していた。比較的大きな勢力になりそうだった(ならなかった)のがHomeLANで、これは屋内電話配線を利用してLANを構築しようというものだった。

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