14個のスピーカーを組み込んだTesla Model 3は空間オーディオ、ハイレゾを楽しめる?:走るガジェット「Tesla」に乗ってます(5/5 ページ)
Tesla Model 3 ロングレンジは14個のスピーカーを搭載している。これらを駆使してどのようなサウンドを奏でることができるのか、ご紹介しよう。
Model 3の車内で空間オーディオを楽しむ
前述の「Dolby Atmos」や「360 Reality Audio」といったメジャーな空間オーディオフォーマットには非対応のTeslaメディアプレイヤーですが、スマホをBluetooth接続することで、Apple MusicやAmazon Music Unlimitedの空間オーディオ音源を擬似的に楽しむことができます。
Apple MusicにはDolby Atmos、Amazon Music UnlimitedにはDolby Atmosと360 Reality Audioに対応した楽曲が配信されています。それらの音源を再生し、ステレオ版と空間オーディオ版を聴き比べてみましょう。空間オーディオ版の方は、まさしく「空間」を感じます。
ステレオ版は、音像が正面に張り付いた印象なのに対し、空間オーディオ版は頭上空間や奥行きを感じると思います。Apple MusicやAmazon Music Unlimitedで「空間オーディオ」で検索するとさまざまなプレイリストが表示されるのでぜひお試しください。
ただ、Teslaのメディアプレイヤーで聴く空間オーディオは、マルチスピーカーで再生されるべき本来の音像の空間オーディオとは言えない点は覚えておいてください。Dolby Atmosは、ヘッドフォン、2チャンネルステレオ、5.1チャンネルサラウンドなど、最大7.1.4チャンネルまで含めた、あらゆる再生環境で空間オーディオが楽しめる規格です。
しかし、TeslaメディアプレイヤーがDolby Atmosに非対応なので、Model 3車内のスピーカーで聴いているDolby Atmos音源の音像は、Bluetooth接続によるBinaural設定、つまりワイヤレスヘッドフォン向けに調整(レンダリング処理)された音像を聴くことになります。それがゆえに、本来のマルチスピーカー向けの出音と比較して「空間感」は後退してしまいます。特に、頭上や後方に定位した音の表現力がいまひとつです。
TeslaメディアプレイヤーがDolby Atmos等に対応してくれれば、13+1個のスピーカーを駆使して、本来の空間オーディオを楽しむことができるのですが……。ただ、それも期待薄な部分があります。2021年以前のModel 3のインフォテインメント系システムには、Intel Atomプロセッサが使われています。Dolby Atmosのレンダリング処理を行なうには、Atomプロセッサでは力不足かもしれません。
ちなみに、Apple MusicとAmazon Music Unlimitedで、同一アーティストの同一楽曲を比較すると音像やバランスが異なる現象が見受けられます。理由は、Appleが端末側で独自のレンダリング処理を実施しているからです。空間オーディオに興味がある方は、拙記事「Appleの空間オーディオがDolby Atmosから逸脱し始めた いったい何のために?」をお読みください。
本稿の後半は筆者の得意分野だけに、空間オーディオという、マニアックな方向に話が進んでしまいましたが、多様な楽しみ方ができるのもModel 3オーディオの魅力です。お気に入りの音楽をお供にドライブをエンジョイしてください!
山崎潤一郎
音楽制作業の傍らライターとしても活動。クラシックジャンルを中心に、多数のアルバム制作に携わる。Pure Sound Dogレコード主宰。ライターとしては、講談社、KADOKAWA、ソフトバンククリエイティブなどから多数の著書を上梓している。また、鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」「Alina String Ensemble」などの開発者。音楽趣味はプログレ。Twitter ID: @yamasakiTesla
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