光ファイバーで毎秒1ペタビット、NICTが伝送実験に成功 8K放送1000万チャンネル分
NICTは19日、4コア光ファイバーを使って1Pbps(P=ペタ)を超える伝送に成功したと発表した。8K放送1000万チャンネルを一度に伝送できるという。
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は5月19日、研究開発用の4コア光ファイバーを使って1Pbps(P=ペタ、テラの1000倍)を超える伝送に成功したと発表した。8K放送1000万チャンネルを一度に伝送できるという。
NICTネットワーク研究所のベンジャミン・パットナム主任研究員らのグループは、光の波長を変えて1本の光ファイバーに複数の光信号を通す波長多重技術を駆使した伝送実験を行い、1.02Pbpsで51.7kmの伝送に成功した。
波長多重技術は波長の数に比例して伝送速度を上げられるが、光伝送に適した波長帯域は限られる。実験では一般的に使われている「C帯」と「L帯」と呼ばれる波長帯域に加え、これまで使われていなかった「S帯」(1460-1530nm)もラマン増幅(光信号増幅方式)などの活用でほぼ完全に使用し、合わせて20THz(T=テラ)という帯域幅を確保した。
変調方式は効率の良い256QAMを基本としながらS帯では64QAMを使用。現在の光伝送システムを大きく上回る801波長を実現した。
次世代の基幹系通信システムに
現在、中・長距離通信に普及しているシングルコア・シングルモード光ファイバーは250Tbps(T=テラ)程度が容量の限界と考えられており、伝送路を増やすマルチコアファイバーや光信号の伝搬モードを増やすマルチモード化の研究開発が進んでいる。NICTは20年に15モード光ファイバーを使った実験で1Pbpsの伝送に成功したが、マルチモードファイバーはモード間の信号干渉を除去するデジタル処理が必要になる。
対して今回の実験は、早期の実用化が期待されている標準外径の4コア光ファイバーを用い、モード分離処理は必要ない。NICTは「Beyond 5G以降の情報通信サービスの進化を支える基幹系通信システムの実現に向けて大きく前進した」としている。
論文は米国サンノゼで15日に開幕した光デバイス関係の国際会議「CLEO2022」で「最優秀ホットトピック論文」に採択された。現地時間の19日に発表する。
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