日産が取り組んだメタバース新車発表会の舞台裏 「アバターワーク」が重要(4/4 ページ)
日産自動車の軽EV「サクラ」は正式発表日にバーチャル発表会とバーチャル試乗体験会も開催された。その舞台裏を担当者への取材から探る。
現場アテンドスタッフ=アバターワークが重要
個人的に重要なポジションと感じたのが現場アテンドスタッフ、すなわちアバターワークです。誰もがVR機器に慣れているわけではないし、VRChatというメタバースプラットフォームを知っているわけではない。だからこそ素早く的確に操作を案内できるスタッフがいることで、参加者の多くが満足する場となるのだと感じました。
「現場アテンドスタッフはVRに慣れていること以上に、トラブル時の臨機応変さが求められます。またお客さまをもてなす現実世界同等のホスピタリティも必要となります。アバターとはいえ、動きや声のトーン、反応からゲストが何に困っているかを感じ取れる人材がいることは、メタバース内でイベントを開催するうえで大きな安心につながります。誰をどこに配置して、どんなトラブルを想定して共有しておくか、このあたりが今後も重要なカギだと考えています」(鵜飼さん)
実際にアバターワークを担当した桜羽ことね(@T8oNana)さんにもお話を伺いました。
「今回は発表会のときの現場アテンドおよび、公式YouTube配信時のドライバーとしてアバターワークしました。私自身、車が大好きなんです。VRChatでも毎日のように運転して遊んでいるんですよ。VR空間では、自分の好きを仕事にすることができると思っていたので、光栄でした」(桜羽さん)
実のところ、企業によるメタバースを用いた商品アピールは以前から行われてきました。
自動車に関しては2008年、トヨタがTOYOTA METAPOLIS(meet-meをベースとした独自サービス)にて「アルファード/ヴェルファイヤ」の発表会を行いました。またアウディは2016年にVRショールームをオープン、2018年にはVRChat上のイベント・バーチャルマーケット上で高級EVである「e-tron」の試乗体験ブースを公開しました。
リアルの発表会・試乗会では、自動車そのもののアピールはしやすくても、その自動車がある生活を印象付けるアピールがしにくい。しかしメタバースであれば、見せたいものを見せたい形で表現できるというアドバンテージがあります。少なくともリアルでは、試乗コースを景色込みで作り込むのは無理難題というもの。
「現実の試乗は購買に先駆けた試し乗りですが、メタバースのそれはファーストコンタクトです。コロナ禍が続いている現在、ファーストコンタクトの機会が圧倒的に足りていないののですが、メタバースであれば世界のどこからでも可能にしてしまいます。これは画期的だと考えています」(鵜飼さん)
どこにいても、イベント会場までゼロ距離なメタバースならではのメリットがこれ。今現在は、リアル商品の物品販売には向かない場所だと感じますが、だからこそメタバースの得意とする要素を掴むことが大事となるのでしょう。
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