富士山が噴火!? その時、日本は――“災害DXベンチャー”がSFで描く未来 無人航空機が果たす役割とは:「SFプロトタイピング」で“未来のイノベーション”を起こせ!(3/3 ページ)
もし富士山が噴火したら――こんな想定のSF小説があります。これはSFをビジネスに活用する「SFプロトタイピング」の実践例です。自治体の災害対策をテクノロジーで支援するテラ・ラボの事例を紹介します。
誰も知らないシチュエーションのシナリオを形にする
そのとき、SFプロトタイピングが有効になる
大橋 日本全国の危機対策部署のシステムを統合することは、日本政府が取り組むべき課題ですよね。
松浦 アメリカには「アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁」(FEMA)があります。これは、大災害に対応するアメリカの政府機関です。日本でも危機管理を担う新しい省庁を作らないといけないと考えます。
大橋 それもヒアリングで聞いたので災害監視用無人航空機では「防災庁」を作りました。物語だけを読んだ人は「こんな庁はない」と思うでしょう。
松浦 日本では災害が起きたとき、災害本部は自治体と自治体の長が本部長を担うと定められています。これは「自分達の街は自分達で守ろう」という意味合いでとてもいいことです。
しかし一方で、市町村が手を挙げないと国としては支援体制が取れないという欠点もあります。市町村が災害対策の軸になりつつ、一方で国を挙げて支援できる体制にするべきだと思います。
大橋 災害監視用無人航空機では、新しいテクノロジーとしてテラ・ドルフィンを登場させました。いつ起きるか分からない自然災害を前に、テラ・ラボでは今後スピード感を持って開発することは可能ですか?
松浦 はい、十分可能です。開発スピードはさることながら、良いものを安定した形で運用することも大事だと思います。
大橋 テラ・ラボが今後歩んでいく中で、今回作ったSFプロトタイピングの災害監視用無人航空機は少しは役に立ちそうですか?
松浦 多くの人は、本当に富士山が爆発したらどうなるかといった事態について、具体的なシチュエーションが見えないと身に迫る危機を想像できないと思います。そうした中で想定することが大切です。想定シチュエーションを作って、こういうときはどうする、誰がどう動くとシナリオを組み立てる必要があります。その意味では、今回のSFプロトタイピングは有効だと思いました。
大橋 ありがとうございました。
テラ・ラボのようなベンチャー企業は、未来を描くことが求められます。その夢をSFで描くことが、SFプロトタイピングでは可能です。
テラ・ラボが推進する災害対策DXによる未来構想がこの先どうなっていくのか、今後もSFプロトタイピングで描いていきたいと考えています。同社は今後活躍するでしょう。その取り組みは、SFプロトタイピングがイノベーションのためのツールとして認識される世の中の実現に大きく貢献すると思います。
SFプロトタイピングに興味を持った、取り組んでみたい、もしくは取り組んでいるという方がいらっしゃいましたら、ITmedia NEWS編集部までご連絡ください。この連載で紹介させていただくかもしれません。
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