Engadgetってなんだったんだ? Ittousai氏に聞く、これまでと新媒体TechnoEdgeが指し示す先:小寺信良のIT大作戦(3/4 ページ)
日本のテックメディアの柱の1つだったEngadget日本版が終了し、後継媒体としてTechnoEdgeが誕生した。Engadgetを日本に持ってきて、今度はTechnoEdgeの編集長に就任したIttousai氏に話を聞いた。
TechnoEdgeが指し示す先
小寺 TechnoEdgeの話をお伺いしたいんですけど。今回編集長という立場になったわけですけど、編集長を引き受けた理由っていうのはどういうところなんでしょう。
Ittousai そりゃクビになったからですね(笑)
小寺 (笑)。Engadget編集部に何人かいて、その後別の編集部に移籍した人もいらっしゃいますけど。元の編集部の人たちでTechnoEdgeに連れてきた人ってどれぐらいいるんです?
Ittousai 連れてきたっていうわけじゃないんですけど、一緒に来たのはずっと縁の下の力持ちで編集やってもらってた小林(直樹)さんのみで、あとは鷹木(創。元Engadget日本版編集長)。鷹木は編集にはノータッチで、会社作ったりだとかをやってるので。という意味では、3人ですね。
小寺 今TechnoEdgeのサイトとか見てると、橋本新義さん(フリーライター)とかが記事書いていて。やっぱりフリーのライターさんも Engadget時代の方に引き続きお願いして記事を回していくって感じになるんですかね?
Ittousai どうなりますかね? まあ、スタッフライター的に雇用の形にして専属でっていう、記者・編集者を増やしたいとは思ってるんです。けれどもまあ本当にできたばっかりの3人の会社でどうなるかもまだ分かんないので、まあひとまずはこの形でスタートしてる感じですね。
小寺 Ittousaiさんも結構記事を書いてるじゃないですか。
Ittousai そうですね。他には人がいないというのもあるし、媒体としての色を出すインタビューなんかはやらなきゃいけないので。
小寺 TechnoEdgeになって、Engadgetとの違いっていうか、扱うネタのカバー範囲ってどういうふうに考えてるんですか?
Ittousai んーそれどういうべきなのかな? もともとEngadget日本版が全体としてやってきたものと、僕自身がやってきたものっていうのは、結構重なるようで重ならないというか。初期を除けば、僕がやってたのは極々一部で、あとは他の才能ある皆さんが主に書いていた媒体だったわけで。
テクノエッジもまあ表面的には同じで、いわゆるガジェット媒体と思われても仕方ないという感じではあります。ただ本家Engadgetもそうだし、僕もそうなんだけれども、製品だけのカタログみたいなものよりは、テクノロジーを巡るニュースは全部つながったものとして扱う。それこそ論文読んで面白いもの、サイエンスの発見ネタでもいいし、実用化できるか分からない新技術の話でもいいし、あるいは得体の知れない、どういう需要があるのかわからない超ニッチな手作りガジェットでもいいし、という感じで。
イノベーションにつながる発見があって、企業や集団、それこそ国家の思惑があって、規格策定やにらみ合いがあって、最終的に形になって買えるようになるのがガジェットなり製品なんですけど、その最後の段階だけ見ててもほぼ意味がないわけですよね。
「これがお買い得です」ってだけじゃなく、こういうものが出てくるだろうだとか、こういうの出てきたらいいなという憧れだとか、まだ決まっていないからこその楽しさを伝えたいし、自分でも楽しんでいきたいなと思ってるので。モノ自体にフォーカスしたカタログというよりは、もうちょっと広くなるかなとか思ってます。
小寺 でもそれって17年前、Ittousaiさんがほぼ1人で日本版やってた頃とマインドが一緒ですよね。
Ittousai そうですね。面白がるものはそんな変わってないですからね。
小寺 今個人的に、どの分野に興味があるんですかね。僕が見た限りでは、やっぱりメタバースに興味があるのかなっていう感じで見てはいるんですけど。
Ittousai メタバース、AR/VR は注目ですけど、それって当たり前というか。今コンシューマー向けのエレクトロニクス製品だとかテクノロジーで、世界がどうにかなるかもっていうのって、それくらいしかないですよね。なんかすごい得体の知らないエネルギー源が発見されただとか、すごい勢いで火星に引っ越してますだとか、ご家庭で人体改造とか、そういう時代だったら見るべきものが違うんでしょうけど。
いわゆるメタバースなるものの社会的な存在感が増していって、法律なり規範なりがどう変わってゆくのかもすごく面白い。同時に、AR/VR というのはシンプルに人間の知覚の仕組みに近づいていく技術なので、マニフェストデスティニーというか、技術の進む方向性として自明なので、当然注目する分野というのもあります。結局は目で見て耳で聴いて、注意を向けるもののほうを向くわけですから。
小寺 今後、アメリカの本家がない状態でここからメディアを伸ばしていくわけですけど、そうなるとやっぱり国内取材が中心になっていく感じになるんですかね。
Ittousai 確かに米国のメディアにしかこの情報は出さないです、みたいな制約はもちろんあるし、そういうところに本家の存在でアクセスできてたっていうのは大きいですね。ただそれで日本のネタばっかりになるかというと、そうでもないと思います。
小寺 昔からそうでしたけど、やっぱりモノ作りって海外の方が面白いっていうところもありますよね。変なもんってだいたい海外から来るじゃないですか。やっぱりその辺目線は変わらない感じですかね。
Ittousai 昔結構言われたのが、日本で買えないものをなぜ載せるんだ、みたいな。ヨドバシで売ってないものをなぜ載せる? みたいな話があって。知らんがなお前が頑張って買えよとしか言いようがないわけですよ。
地元で売ってるものから選ぶだけで満足できないわれわれは、あるいは読者は、どうやって手に入れようっていうのをみんなで頑張ってたわけじゃないですか。それが今、普通の人がいろんなアプリで海外のものを気軽に通販したりだとか、Kickstarterとかもあるし。あんまり日本のものじゃないとか、区別しない時代になってるのかなと思いますね。単に日本が世界的なテクノロジートレンドから重要じゃなくなったって話かもしれないですけど。
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