岐路に立つテレワーク、不況で労働者の“踏み絵”に 監視ツールとしてのメタバースにも注目:ウィズコロナ時代のテクノロジー(3/3 ページ)
世界各国での新型コロナウイルスの新規感染者がじわじわと増え続けている。しかし従業員に対してオフィス出社を求める企業は増えており、またテレワーク社員を監視するため技術としてメタバースに注目が集まっているという。
データ収集で企業と従業員の格差が広がるリスクも
この点について、よく引用されている研究がある。それはスタンフォード大学の研究者ジェレミー・ベイレンソンさんが18年10月に発表したもので、それによると、仮想空間に20分間滞在しただけでボディーランゲージに関する200万ものデータポイントを収集できるという。
VRシステムはユーザーの視線や手足の動きに反応して、彼らに見せるコンテンツの内容を変化させる。つまりユーザーの体の動きを逐一把握しているわけであり、それがこうした大量の行動データ収集につながる。最近ではユーザーの脳波を読み取るような装置の商用化も進んでおり、このデータポイントの数は多くなることはあれ、少なくなることは考えられない。
Metaはこうした懸念に対して、メタバースのプライバシーとセキュリティに関する研究に5000万ドルを出資することを約束しているが、メタバース事業部門に対する年間の投資額は数十億ドルに達すると言われ、監視に利用されるリスクよりも事業拡大の方を注視している。
もちろん先ほどのアンケート結果も示しているように、仮に大量の行動データを取得できたとしても、それを従業員に通知することなく分析するような企業は少数派だろう。しかし警告なしで監視する企業が存在するのも確かであり、AIやアルゴリズムの力を借りれば、大量データの中から問題行動を瞬時に把握するのも不可能ではない。
その問題行動とされたものが実は誤解であったり、あるいはアルゴリズムによる判断の精度に問題があったりすることも考えられる。従業員側に反論する機会が与えられないまま、人事評価を下げられたり、あるいは解雇させられたりするというのが、考えられる最悪の状況だ。
こうした課題の解決を企業側だけに押し付けるわけにはいかない。パンデミックによって職場や働き方、企業と従業員の関係、そして労働に関するテクノロジーが大きく変わろうとしている今、法規制や技術的解決といった側面からもこの問題を考える必要があるだろう。
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