3Dプリンターは“悪者”ではない──銃撃事件から考える「技術との適切な接し方」(3/3 ページ)
我々は技術が生み出した成果に囲まれて生きている。7月8日、安倍晋三元首相が銃撃されて亡くなった。この件も、いろいろな意味で技術と無縁ではない。彼を撃った銃も、銃撃に関しての情報も、すべて技術を介した存在である。我々は技術とどのような距離感で接すればいいのだろうか?
「感情のアンプ」であるSNSは凶器にもなる
もう1つ、技術と人の関係を考えておきたいこともある。
それは「情報の拡散」だ。
大きな事件が起きると、SNSではさまざまな噂が流れる。正確にいえば、噂はSNSだけから生まれるわけではない。メディアの報道でも、個人のブログでも生まれる。今はいわゆる「トレンドブログ」のように、真偽よりも「ネット検索からのページビュー」を目的としたジャンクな情報も増えている。
そうした情報が、ある種の感情とともに広がるのだが、その経路としてはSNSが多くなる。
SNSは簡単に書き込みできて、情報の拡散も簡単だ。冷静になる前に、感情のままに情報を流してしまうことがある。SNSには「感情のアンプ」(アンプ=増幅装置)という側面があり、だからこそ「共感のメディア」としての魅力がある。
だが、大きな事件にともなって生まれる強い感情は、うねりとなって、自分や他人の感情をさらにかき乱す。怒りや不安や悲しみが、従来のメディアよりもずっと大きなものになって広がっていくのを助けるわけだ。
過去幾度も起きた大災害・大事件や、コロナ禍でそのことを我々は何度も経験してきた。だが、不安などから情報を求めてしまう意識から、SNSから目を離せない時がある。
これは、技術と人のバランスが崩れた状態と言っていい。そのことを認識して、一時的に離れる時間を作るべきだ。
Twitterは「ショッキングな情報から身を守る」設定を用意していて、ITmediaでも紹介されている。
この際SNS側は、こうした設定を、大事件が起きた時だけ「ワンクリックで変えられるボタン」を表示して切り替えられるようにしてはどうだろうか。あるいは、短期間だけアクティブユーザー数が減ろうとも「離れていただいてもかまいません」とアナウンスすべきかもしれない。
SNSは情報収集やコミュニケーションにとって重要な道具だが、時にはペーパーナイフでなく鋭いナイフになる。その切り替わりを、利用者はちゃんと把握できるだろうか。
自分の目の前のサービスが今、どちらに向かっているのか。それを考えることも必要なのかもしれない。
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