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イーロン・マスクのTwitter買収を米右派はなぜ歓迎したのか そしてなぜ、私たちも歓迎できる可能性があるのか(3/3 ページ)

小林啓倫さんに、イーロン・マスクによるTwitter買収の一連の動きを題材に、政治とSNSの関係を論じてもらいました。

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Twitterの多様化を歓迎すべき理由

 もしそうした傾向が改めて強化されるのであれば、それは私たちにとってはあまり好ましくない状況だと言えるだろう。ソーシャルメディアが細分化して、党派ごとに独自のプラットフォームに閉じこもるような状況は、長い目で見て民主主義を損なうものになる可能性があるためである。自分の信念とは反する言論が行われているからといって、それを目にしなくて済む空間に逃げ込んでいれば、ますます党派間の対立が深まるだけだ。

 アイダホ州立大学のザック・ガーシュバーグ准教授と作家ショーン・イリング氏は、共著『民主主義のパラドックス(The Paradox of Democracy)』の中で、民主主義には「自由なコミュニケーション」という前提が求められるが、その前提はまさに、デマや分断といった民主主義をむしばむ現象を可能にすることを指摘している。

 これは歴史上何度も繰り返されてきた現象だが、特にコミュニケーションのためのテクノロジーが移行する時期に強く見られると彼らは主張する。メディアが政治よりも速く進化することで、人々の間で合意を形成する手立てが確立されず、民主主義が不安定化するのである。

 多くの人々が参加して、さまざまな社会階層や社会集団の統合をもたらすものと期待されていたインターネットは、いまや「バルカン化(バルカニゼーション)」という言葉で象徴されるような、分断やたこつぼ化を実現する場所として機能するようになっている。これも一種の、コミュニケーションのためのテクノロジーが変化しつつある状況だと言えるだろう。

 だとすれば私たちは、自分の利用するコミュニケーション手段が自分には受け入れられない主張で「汚される」ことを悲しんだり、自分と似た人物しかいないメディアに引きこもったりすることを選択するのではなく、民主主義を守るために、同じ空間に多種多様な意見が混在する状況を選択しなければならない。それは結果として、より安定した社会を実現することになるだろう。

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