AIが評価するお絵描きゲーム 判定は「アートっぽいけど、何なのか見当つかない」 高得点を狙うには?:遊んで学べる「Experiments with Google」(第15回)(2/2 ページ)
お題を基に絵を描き、お題にどれだけ似ているかAIで判定するWebアプリ「Guess the Line」がある。試してみたら、評価は「アートっぽいけど、何なのか見当つかない」だった。高得点を狙うコツを考えてみる。
AIの判定「アートっぽいけど、何を描いたか見当もつかない」
新しいレベルのお題は「A VERTICAL PAIR OF PANTS」(縦長に置かれたズボン)「A MORDERN ART FORK」(モダンアート風フォーク)「A WOODEN ARM」(木で作られた腕)など。お題を見ただけでは何を描けばいいのか思い付かない。ヒントを見ながらトライしてみたが、今回は再挑戦を言い渡された。
「A GEOMETRIC LEG」(幾何学的な脚)に至っては、AIに「アートっぽいけど、何を描いたか見当もつかない」とまで言われてしまった。もっとも、自分でも何を描いたか分かっておらず、その指摘は認めざるを得ない。いずれにしろ、すっかりゲームに熱中して楽しんでしまった。
気になった作品はGoogle Arts & Cultureでチェックできる
このGuess the Lineは、Googleのアート紹介プロジェクト「Google Arts & Culture」の一環だ。同プロジェクトでは世界各地の美術館や博物館の収蔵作品に親しんでもらおうと、さまざまな体験コンテンツを公開している。この連載で紹介した、AIがお絵描きをサポートしてくれる「Giga Manga」や、バーチャル陶芸を楽しめる「3D Pottery」もそのうちの一つだ。
Guess the Lineでヒントとして表示された美術品などの中には、興味深いものもあれば、お題とのつながりに納得できないものもあった。そうした疑問は、ヒントの画像からアクセスできるGoogle Arts & Cultureのページで解消しよう。
例えば「MINIMALIST DRILL」(ミニマリストのドリル)のヒント画像は、どう見てもドリルと思えなかった。作品の解説文を確認してみると、やはりドリルでなくボトルラックだと分かった。恐らく、AIが正しく認識できなかったのだろう。それはそれで、予想外の作品に出会える喜びがある。
もちろん、この連載で紹介してきたGoogle Arts & Cultureに関連するコンテンツと同じく、各作品の詳細や収蔵館を調べたり、関連性の高い別の作品をたどっていったりという楽しみ方もできる。
AIはどうやって類似性を判定しているのか?
Guess the Lineは、絵を描いてAIが判定するというゲーム性があるので、気軽に芸術作品に触れられる。さらにAIをこうした用途に使えると示すのにも成功している。このAIはニューラルネットワーク構築用ライブラリ「Torch」を活用している。
では、描いた絵がお題に似ているかどうかを、どうやってAIで判定しているのか。ごく簡単に説明すると、お題のデータをある方法で数値化した多次元データと、描かれた絵を数値化したデータを比較し、両データがどの程度近いか計算して判定している。この多次元データをベクトルと見なし、両ベクトルの距離を調べることで2つのデータがどの程度近いのか、似ているかなどを数値化していた。
この仕組みをきちんと理解するには数学の知識(微分やベクトル、行列、指数関数、対数関数など)が欠かせない。この原理の理解に役立つコンテンツを、Experiments with Googleの中で見つけた。それが「Visualizing High-Dimensional Space」だ。
これは、機械学習アルゴリズムで参照するベクトルデータを視覚化したWebアプリだ。個々のベクトルが多次元空間にどう分布しているか調べることで、AIが類似性を判定する基本的な概念を把握できる。
例えば、「cat」(ネコ)という単語の近くには、概念が似ていたり関係が近かったりする「tiger」(トラ)「rabbit」(ウサギ)「elephant」(ゾウ)「pet」(ペット)「sleeping」(寝る)という単語が存在する。elephantの近くに「hat」(帽子)があるのは不思議だが、もしかしたら「星の王子さま」に登場する「ゾウを飲み込んだウワバミ」からの連想かもしれない。
このVisualizing High-Dimensional Spaceは奥が深そうだ。そこで次回はこれを詳しく見ていき、AIの秘密に触れてみたい。
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